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産経、3記事とも当事者取材せず痛烈批判 沖縄めぐるネット報道

  • 2018年3月5日
  • 05:05
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沖縄をめぐる産経報道。2月28日現在、3記事ともネット上に掲載されている
沖縄をめぐる産経報道。2月28日現在、3記事ともネット上に掲載されている

 産経新聞は2月8日付紙面で、沖縄県内の交通事故で「米兵が日本人を救出した」という未確認情報を伝え、それを報じない沖縄2紙を批判した記事について取材が不十分だったとして「おわびと削除」を掲載した。これまでにも当事者に取材しないまま、米軍や自衛隊に否定的な県内の動きを痛烈に批判する記事があった。3例を検証する。





 記事化に当たって、本紙は産経新聞広報部に11項目の質問を送付。当事者に取材しなかったのはなぜか、インターネット向け記事と新聞向け記事で事実関係のチェック基準に違いがあるのかなどを尋ねた。2月28日までに寄せられた回答は「個別の記事や取材、編集に関することは従来よりお答えしていない」だった。





 





<辺野古新基地>抗議の市民逮捕を「朗報」





 産経新聞ウェブサイトは昨年11月10日、「辺野古で逮捕された容疑者 基地容認派も知る“有名人”だった」というタイトルの記事を掲載した。ラッパーの男性(35)が辺野古新基地建設に対する抗議活動中、警察官の合図灯を奪ったとして公務執行妨害と窃盗の容疑で県警に逮捕されたことを取り上げた。





 男性について「基地容認派の間でも名が知られた、いわくつきの人物」と論評し、逮捕を「朗報」と記載。さらに、ネット上に書き込まれたコメントを引用して「高江を皮切りに辺野古でも暴力の限りを尽くし」「天誅(てんちゅう)が下った」「沖縄から追放、強制送還すべき」などと書いた。





 男性は本紙の取材に「阿波根昌鴻さんの非暴力の教えを何より大切にしてきた。暴力を振るったことはない」と説明。記事はネット上で拡散され、同氏がツイッターで何か発言するたび、この記事が繰り返し返信された。「言論を封じ、社会的に抹殺するような記事。全国メディアが個人について、しかも私に取材をせずにここまでデマを書くのは恐ろしい」と話した。





 那覇地検は男性の勾留を請求せず、逮捕翌日に釈放された。記事はその釈放の日に掲載され、2月28日現在もそのままになっている。









 





<沖縄県の統計>観光収入を「過大に発表」





 産経新聞は1月4日付紙面とウェブサイトで「沖縄県が観光収入を過大発表し、基地関連収入と比較することで基地反対運動の材料に利用している」と報道した。「県民経済計算は、売上高などから経費を除いたいわゆる利益部分を公表するが、沖縄県の観光収入は売上高をそのまま公表」と批判した。





 翁長雄志知事は同月19日の記者会見で「筋違い」と全面的に否定。県によると、産経新聞の指摘した観光収入は県民の経済活動状況の推計である県民経済計算そのものではなく、それに添付する参考資料にすぎず、そもそもの前提が違う。注釈で算出方法に違いがあることを明記している。





 さらに、国や他の都道府県も沖縄と同様の方法で観光収入を計算しており、翁長知事は「沖縄だけをこのように取り上げ、基地依存をごまかしているような話にするのは大変残念」と不快感を示している。





 産経は、翁長知事が講演や記者会見で「(過大に評価した)観光収入を引用して基地依存の低下を強調している」とも報道。翁長知事はこれも否定した。





 記事の掲載前や知事の会見後に産経新聞からの県の担当部署への取材は一度もなかったという。





 





<前宮古島市議>団地入居「月収制限超え」





 産経新聞ウェブサイトは2017年3月22日、陸自配備に反対して同年1月の宮古島市議補選に当選した前市議の女性(37)が「補選後に市内にある県営団地に入居していたことが分かった」と記事にした。「月収制限超える県営団地に入居」との見出しを付け、本文でも市議としての月収が「資格より大幅に上回る」と記述した。だが県の規定に照らしても、前市議の入居資格に問題はなかった。





 県の規定によると、前市議の世帯の場合、県営団地の入居資格は月収21万4千円以下。前市議は補選2カ月前の16年11月に県営団地入居のための審査書類を提出し、当時の月収が入居資格を満たしていた。





 さらに入居後に県営団地に住む資格がなくなるのは5年以上住み、直近2年間の月収が31万3千円を超えた人に県が明け渡しを求めた場合。記事掲載時に前市議は、団地への入居期間も市議報酬の受け取りのいずれも2カ月しかたっておらず、「月収制限を超える」「資格より大幅に上回る」との指摘は当てはまらなかった。





 当選後、前市議は県に問い合わせ、「条例上、入居に問題はない」との回答を得ている。ところが記事を見た市民から抗議が相次いで寄せられ、その都度説明に追われた。17年4月に同社へ抗議の電話をし、記事の訂正を求める内容証明郵便を送ったが回答はなく、28日現在もネット上に記事が掲載されている。





 記事には第三者から聞き取った前市議の「発言」が引用されたが、前市議は「発言していない虚偽の内容が載っている」と抗議。「産経は私に取材せず、入居が法令違反でないにもかかわらず、印象操作で問題のように仕立てた。訂正を求めても応じないのは明らかな人権侵害で、報道機関として誤りを正すべきだ」と訴えている。









 





産経が当事者に取材しなかった理由





◆大谷昭宏氏(ジャーナリスト)





 産経新聞の一連の報道は、手抜き取材やうっかりミスによる誤報ではない。最初から沖縄県民に悪意をぶつけることを目的とした敵対記事だった。





 批判する場合、公平性を担保するため相手の言い分を聞くのが報道の原則だ。だが、敵対記事を書くためには事実が明らかになっては困る。根底から崩れてしまう。だからあえて当事者に聞いていない。産経新聞はメディアであることを自ら放棄したに等しい。





 安倍政権による裁量労働制の不適切データ問題がよく似ている。自らに都合が良いように事実の方をねじ曲げる、そんな手法がまかり通っている。共通の目的は日本を戦争のできる国にすること。そのためには沖縄戦の体験、平和を希求する県民が邪魔になる。





 対抗するために、ジャーナリズムの原則を持ちだしても効果がない。例えば観光収入の報道について、県が産経新聞に損害賠償を求めて提訴してはどうか。県民全員に対する侮辱であり、精神的損害が1人100円としても1億円を超える。





 でたらめだからと放っておいては被害が繰り返される。司法の判断を仰ぎ、一つ一つつぶしていく必要がある。(談)


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