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シンポジウム「沖縄から問う報道と表現の自由」詳報 【動画あり】

  • 2016年11月26日
  • 11:21
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<div class="caption">岸井成格氏</div>
<div class="caption">岸井成格氏</div>

 沖縄の声を本土や海外に届ける戦略を探るシンポジウム「沖縄から問う報道と表現の自由」(共催・沖縄タイムス社、沖縄国際人権法研究会、特別協力・連合沖縄、後援・沖縄弁護士会)が21日、那覇市久茂地のタイムスホールで開かれた。基調講演とパネル討論があり、政権による報道規制が強まる中、メディアが権力監視を継続する必要性を確認した。北部訓練場のヘリパッド建設で県外の機動隊員による差別的な「土人」発言では、差別の構図を「立場の弱い側の言葉を奪い、権利の獲得を阻害し、社会を分断させる」と分析。本紙の石川達也編集局長は「圧倒的な権力の前で、抵抗する市民の側に立ち報道を続ける」と決意表明した。シンポジウムの模様を詳報する。





■登壇者





 岸井成格氏(毎日新聞特別編集委員)





 アンナ・ファイフィールド氏(ワシントンポスト東京支局長)





 安田浩一氏(ジャーナリスト)





 石川達也・沖縄タイムス編集局長





 司会 加藤裕氏(弁護士)





 





 





基調講演:岸井成格氏「安保と原発批判、許さぬ政権」







岸井成格氏






 政治記者になり復帰前に沖縄へ来たとき、パスポートが必要だった。当時の仕事は、首相の動向を密着取材する総理番。総理府総務長官は山中貞則さんだった。山中さんは台北第2師範学校で、(元県知事の)屋良朝苗さんの教え子だったこともあり、われわれにも沖縄の歴史、沖縄の心を懇々と説いてくれた。





 そして現在の安倍内閣だ。特に集団的自衛権の行使は歴代の首相、内閣法制局長官が「憲法違反であり、憲法改正をしてからでないとできない」と言ってきたものを、一内閣の閣議決定で容認した。





 昨年、TBSニュース23で「変わりゆく国 安保法制」という特集を始め、40回続けた。その中でアーミテージ元米国務副長官にインタビューすると、こう語った。





 「今まで米軍が自衛隊に『協力してくれ』と言っても『憲法9条があるからできません』が、バリケードのように立ちはだかってきた。しかし安保法制で時間的・地理的な制約がなくなった。戦後初めて、自衛隊が米軍のために『命を懸ける』と約束した法律だ」





 これが米側の本音だ。しかし、国会では本当のことが説明されていない。成立の3日前に私は「強行採決は認められない。メディアとして廃案に向け声を上げ続けるべきだ」と言った。すると、全国紙に1面を使った意見広告が出て「偏向報道」「放送法4条違反」だと批判された。





 私の発言の前提には、戦前にメディアが軍部や政治の暴走を止められず、逆に戦意をあおって戦争に突き進んだことがある。日本のメディアは戦後「権力は必ず腐敗し暴走する。これを監視しブレーキをかけることが最も大事な使命だ」という決意で再出発した。





 いま、政権報道にはタブーがある。その一つが安保と原発だ。東日本大震災後、いまだに10万人以上が避難生活を送っている。それでも原発を再稼働する。本当に大丈夫か。





 安保では、辺野古や高江に造ろうとしている基地が何のため、どういう時にどれだけ役立つか。徹底した議論はしていない。そして沖縄の報道に、平気で「売国奴」という言葉が飛び交う。一方で、過激なことを言えば言うほど愛国者とされる。





 自民党の勉強会で「沖縄の二つの新聞は国益に反している。つぶすべきだ」という発言が平気で出る。何が良いか悪いかの価値判断を含め、文明の岐路とも言うべき転換点にきているのではないかと感じる。









 








シンポジウム





取材妨害は政府の自滅行為 ファイフィールド氏 





 





 司会 まず、米国外交に関わる沖縄を見つめてきた立場から、沖縄の問題や報道のあり方を聞かせてほしい。





 アンナ・ファイフィールド氏 沖縄の問題は、日本人だけではなく米国人や世界中の人々にとって重要だ。理由は、米国に沖縄の声が届いていないと感じるからだ。





 米国では、沖縄の問題は日米安保の問題で、日本政府が取り組むべきだという意識がある。それでは、どうしても沖縄の声が米国に届かない。米軍や日本政府側にも取材し、できるだけ幅広い見方を伝えたい。





 司会 これまでに関わった分野や報道の問題について話してほしい。





 安田浩一氏 ヘイトスピーチを取材してきたが、さまざまな差別の現場と沖縄が重なる。差別は単なる罵倒ではなく、多数派と少数派という非対称の関係の中で生まれ、そこから生まれるのは被害者と加害者でしかない。いまの日本社会には「弱者は弱者らしく」「物言う弱者は許されない」という社会的風潮が確実にある。はっきりと違うんだと伝えていきたい。





 司会 沖縄のメディアが報道の自由を侵害されている実態や問題について。





 石川達也編集局長 東村高江のヘリパッド建設現場周辺で、8月に沖縄タイムスと琉球新報の記者が機動隊に拘束された。





 記者拘束に対して本紙は局長名で抗議声明を出した。沖縄で起きていることを全国の人々はどう考えているのか。私たちはその場に住んでいる人の思い、日々現場で声を上げ続けている人々の声を報道していく。これが基本的なスタンスだ。





 司会 安倍政権のメディアに対する姿勢をどう見ているか聞かせてほしい。





 岸井成格氏 安倍内閣が成立したときに、最初に掲げた標語は「戦後レジームからの脱却」だ。第1が憲法改正、第2が教育改革、第3が労働組合運動への対応。その背景には、戦後日本人の誇りを失わせたのは憲法、教育、労働組合が悪いからだというのが彼らの理由だ。最近はこれに加えて取材・報道が入ってきた。





 政権批判は許さない、政権与党に都合の悪い情報は流させない、というはっきりした意思を感じる。その中で特に大きいのは原発と安保だ。









「土人」発言の背景こそ問題 石川編集局長  





 司会 ジョン・ミッチェル氏(沖縄タイムス特約通信員)に対する取材妨害について。





 石川編集局長 ミッチェル氏の自宅のパソコンから米空軍のサイトに接続ができなくなっている。キャンプ・シュワブゲート前で講演した様子を日報に掲載するなどの嫌がらせも起きている。





 司会 今、沖縄では、警察や海上保安庁など国家権力が取材活動を直接妨害する。米軍がジャーナリストの取材を妨害する実態もある。国際的に取材活動を続けるアンナさんにご意見を伺いたい。





 ファイフィールド氏 彼の記事は非常に入念な調査をして書いていると感心した。政府に対して非常に厳しい質問を突き付けるのはいい記者である。彼のIPアドレスがブロックされていることは知らなかったが、非常にショッキングなことだ。報道の自由という点でも日本、米国など民主主義国家にとって、あってはならないことだ。





 批判されているからといってアクセスを断つのは、自滅的な行為だ。こういうことが米国で起きたなら、大勢のジャーナリストの怒りを買っているであろう。ジャーナリストは一般市民に情報を伝える役割を果たすべきであって、それを阻止すべきではない。





 岸井氏 今のことに関連して深刻な問題は、ことし2月に高市早苗総務大臣が国会で「電波停止発言」をしたことだ。偏向を誰が判断するかといったら「それは政府です」と。誰にそんな権限があるんですかと聞いたら「それは総務大臣だ」と答えた。





 外国の記者からは、もしそんなことが欧米の先進国で起きたら、その政権は持たない。大臣も続けられるわけがない。なぜ日本のマスメディアは一致して抗議してやめさせないのか。そしてもう一つは国民がなんで怒らないんだとの声が出た。日本のジャーナリストと温度差が違う。





 司会 機動隊によって記者が拘束された時、本来なら全国のマスコミが大問題にして報道し、国民も怒らなければいけない。日本のマスメディアの現状について。





 岸井氏 政権側のやり方は非常に巧妙かつ執拗(しつよう)だ。新聞もテレビも含めて大いに揺さぶられている。その結果、分断されている。新聞界、テレビ界もまた一つの新聞社やテレビ局の中でも分断されており、なかなか一つの声がまとまりにくい。





 沖縄の問題についてネットで反応が悪いというのがあったが、新聞やテレビでも同じ傾向だ。政治に対する関心の低さ、選挙の投票率の低さと、政治は面倒で、沖縄は一番面倒だということだろう。





 ファイフィールド氏 ワシントン・ポストも安倍政権のメディアコントロールは問題視している。閣僚が公正・公平を決めるというのは、奇異な感じだ。





 司会 「土人」発言を中心に、どういったヘイトの問題が起こっているか話してほしい。





 石川編集局長 「土人」発言は、その言葉自体が問題なのではなく、それをさせている背景こそに根本的な問題がある。沖縄では日々、憲法で保障された「表現の自由」に基づき抗議行動をしている人々に対して、法的な根拠が曖昧なまま機動隊による身柄拘束や排除などが起きている。





 また、政府は安全保障の名の下に、過重な基地負担を強いている。沖縄は20年間変化していないのではなく、毎日虐げられている。









差別の現場、沖縄と重なる 安田氏





 司会 ヘイトスピーチが公然と出て、権力に利用されている。その問題について話してほしい。





 安田氏 6月にヘイトスピーチ解消法が施行された。この法律が本来意味する最も重要なことは行政が先頭に立ち、社会に分断をもたらす差別の解消に努めるということ。だからこそ、機動隊員よりも、差別的発言を許容しているかのような国家機関が許せない。





 一方で、そういった主張がもっとメディアの中から出るべきだ。国家や強者に対して声を上げることが私たちの責務なのだから。





 司会 公平性を理由とした報道への圧力について。





 安田氏 権力と市民との間に公平性などあり得ない。必ず不均衡、不平等、非対称的な関係がある。社会的な力関係を背景に、自分の属性について攻撃されると差別された側は反論できず、そこには言論の自由など存在しない。





 だからこそメディアは、言葉を奪われた者の自由を取り戻すために活動しなければならない。





 岸井氏 公正・公平、政治的中立、メディアにそうしてほしいという人は結構多い。あの「電波停止発言」の根拠は放送法4条。戦後、新憲法ができるのと同時に放送法ができた。国会でもいろんな議論があった。各新聞社の編集綱領もそのころにできた。公正・公平をうたっている。それはなぜか。戦前の反省に立って、権力から規制の口実を与えられないようにするためだ。





 ファイフィールド氏 日本では、政府側がメディアをコントロールしようとしている状況もある。日本にあって他にはないものが、記者クラブだ。仲間内のクラブで、官邸や省庁と緊密な関係を保つように言われており、そこからの情報に頼っている状況がある。これは報道の自由という観点から言えば望ましくない。





 司会 沖縄の声を本土のメディア、国民、米国にどう届けるか。





 石川編集局長 圧倒的な権力に立ち向かう市民の側に立って報道していくというスタンスに変わりはない。





 特集記事を作ったときは県外メディアにも届けるようにしている。県外から来る人を現場に案内し、いま何が起きているのかを見てもらうなど、基地問題の不条理さをどう伝えていくか努力している。一気に広がることは難しいかもしれないが、小さな積み重ねを日々やっていきたい。





 安田氏 普段は東京で県外メディアの記者と交流を重ねているが、平気で「沖縄は基地で食べている」「沖縄は基地に依存している」という人が少なくない。





 マスコミの危機は、自身が招いた結果でもある。自らの弱さを自覚し、主張する。本来のメディアの原点に立ち戻るべきだ。メディアは人々と一緒に、互いにもまれながら強い力に対峙(たいじ)していくことが大切である。





 ファイフィールド氏 非常に難しい問題だ。沖縄や日本だけでなく、メディアにとって広告収入の減少や収益自体が落ちている。特派員をさまざまな場所に置くことも難しい。東京に特派員を置かない新聞社もあるわけで、沖縄まで来て記事を書くのは難しくなっている。





 岸井氏 国民に歴史を知ってもらう努力をどうするか。過大な負担を沖縄に押し付けて我慢してもらっているということも認識されていない。機会があるたびに歴史と課題を突き付け、示していくことが大事だ。





 





日米の侵害、国際社会に訴える 沖縄国際人権法研究会





 沖縄国際人権法研究会(共同代表・島袋純琉球大教授、星野英一琉球大教授)はことし3月、研究者や市民が集まって発足した。米軍基地問題などを巡り、日米両政府による人権侵害の違法性を国際人権法の基準に当てはめて整理し、国際社会に訴えている。





 4月には、来日した国連の表現の自由に関する特別報告者、デービッド・ケイ氏と面会。名護市辺野古の新基地建設に対する抗議行動が政府に抑圧されている状況について報告した。





 ケイ氏は離日にあたっての暫定的な調査結果発表で、海上保安庁の行動やメディアへの圧力に懸念を示した。ケイ氏は来年、正式な報告書を国連人権理事会に提出する予定で、研究会は東村高江周辺のヘリパッド建設に伴う警察力の行使などについて情報提供を続けている。また、国連人権理事会に沖縄の現状を訴える声明発表にも名を連ねている。


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