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「辺野古ありき」判決 違法確認訴訟 基地問題の本質無視

  • 2016年9月17日
  • 08:10
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「辺野古違法確認訴訟」判決の開廷を待つ県側=16日午後、福岡高裁那覇支部(代表撮影)
「辺野古違法確認訴訟」判決の開廷を待つ県側=16日午後、福岡高裁那覇支部(代表撮影)

 名護市辺野古の新基地建設を巡る訴訟で、福岡高裁那覇支部は国側の主張を踏襲し、米海兵隊が沖縄に駐留する地理的優位性や抑止力などを認めた。地方自治法の改正で国と地方が「対等・協力」関係になったにもかかわらず、判決から透けて見えるのは、地方は国の判断に従うべきとの旧態依然とした“従属関係”。裁判所自ら和解で求めた協議による解決の可能性を閉ざすなど「辺野古ありき」とも言える判決内容だった。主な争点の判断をまとめた。





 埋め立ての必要性、つまり辺野古に新基地を建設する必要性について、判決では、国の主張を受け入れ、沖縄に駐留する海兵隊の地理的優位性や抑止力を認めた。普天間飛行場の騒音被害や危険性を除去し、機能を維持するためには辺野古へ移設しなければならず、「新施設が設置されなければ普天間飛行場が返還されない蓋然(がいぜん)性が有意に認められる」と普天間の固定化にも言及した。





 「沖縄から奪った土地に普天間飛行場を造り、古くなったから、危険だから、新たな土地をよこせというのは理不尽だ」という翁長雄志知事の意見や、国土面積の0・6%の沖縄に在日米軍専用施設面積の74%が集中するという問題の本質には目を向けず、政府と同様「辺野古ありき」の姿勢が色濃い判決となった。





 翁長知事は埋め立て承認取り消しの理由の一つに、抑止力や地理的優位性などの根拠は乏しく、海兵隊が沖縄に駐留する必要がなければ、埋め立ての必要もないと強調。戦後71年間の沖縄の過重負担が将来にわたって継続する不利益の方が大きく、埋め立て承認の要件となる埋立法4条1項1号の「国土利用上適正かつ合理的」とは言えないと訴えてきた。





 判決は潜在的紛争地域の朝鮮半島や台湾海峡と沖縄が距離的に近いこと、その上で沖縄が北朝鮮の弾道ミサイル「ノドン」の射程外であること、日本の海上輸送交通路に位置し、グアムよりも沖縄の地理的優位性は認められると判断した。





 ただ、なぜノドンか、なぜグアムとの比較か、有事の際に在沖海兵隊がどのような役割を果たすかは明確になっていない。





 また、海兵隊の機動力、即応力を発揮するため、地上部隊と航空部隊を切り離せないという国の主張を採用。一方で、航空機や人員を運ぶ艦船は長崎県佐世保市にあるため、機動力、即応力が損なわれるという県側の主張を退けるには、具体的で判然とする理由は見当たらない内容だ。





 判決では、戦後71年間の沖縄の過重負担や名護市長選、知事選、衆院選などで示された「辺野古反対の民意」を認めながらも、辺野古新基地が普天間飛行場の半分以下の面積であることを強調し、「沖縄の負担軽減に資する」と展開。「新基地反対の民意に沿わなくても、基地負担軽減を求める民意に反するとは言えない」と結論づけた。





 普天間の面積は県内の米軍基地全体の2%にすぎず、返還されても嘉手納やシュワブ、ハンセンなど多くの基地は残る。そのために機能強化を伴う新基地を受け入れることはできないという「民意」には、まったく答えていない。









■透けて見える国の優位





 今回の訴訟では国と地方の関係も問われた。1999年の地方自治法改正で国と地方が対等、協力関係になったのならば、国交相が翁長知事の判断に関与し是正指示をすることはどの程度認められるのか。





 判決は、知事の主張を「失当」と退けた。法定受託事務の処理に法令違反があった時、国が是正指示をすることは当然許されると指摘。「是正指示が認められるのは事務処理に裁量の逸脱や乱用があり、それが全国的な統一性が必要な観点から看過しがたい場合」とする県の主張を認めなかった。





 知事が国防、外交に関する事項を審査できるのかも争われた。判決は「埋め立て事業の性質や内容を審査することは不可欠で、それが国防、外交に関することでも知事の審査権が及ぶ」と判断した。一方で「米軍基地の必要性が乏しい」「住民の総意」などとして全国の都道府県知事が埋め立てを拒否した場合、国の判断が覆され、地方の判断が国の判断に優越すると指摘。地方自治の原則に沿わない「不都合な事態だ」として、国防、外交上の必要性に不合理な点がないなら、国の判断を尊重するべきだと付け加えた。





 全国の都道府県知事の判断が国の判断を「覆す」ことになるなら、国はその政策を見直すべきではないかという視点が判決にはなく、国の判断に地方は従うべきだという考えが透ける。





 また、県は広大な米軍基地や米軍人・軍属の犯罪には自治権が及ばず、新たな基地は自治権が制限される範囲を増やすことになると訴えた。判決は、新たな基地が造られるのは米軍キャンプ・シュワブの米軍使用水域内で、埋め立て面積は普天間飛行場の半分以下になるため「自治権の及ばない範囲は減少することが明らか」と強調。基地の過重負担にあえぐ県の実情からはほど遠い認定となった。









■係争委の意味軽視





 国は、県が是正指示に対応せず放置したと訴えた。判決はまず、県が是正指示の適法性を検討するのに必要な期間を「国地方係争処理委員会(係争委)の審査決定が通知された時まで」とし、指示に従って承認取り消しを撤回するのに必要な期間は「長くても1週間程度」と認定。その期間が過ぎても対応しないことは「違法」と判断した。県は、係争委が国と県に協議を促したことを重視していた。「訴訟ではなく協議をしたい」として、係争委決定後、是正指示の取り消し訴訟を提起しなかった。しかし、多見谷寿郎裁判長は判決で「もともと和解において(係争委の)決定内容には意味がないものとしており、県は取り消し訴訟をするべきだった」と述べた。





 これに対し、県側代理人が反発。松永和宏弁護士は判決後の会見で「『関係者が係争委に意味がないと認識していた』という事実はない」と強く否定し、代執行訴訟で和解案を示した際、多見谷裁判長が係争委への申し入れを求めた県側に「係争委に意味があるのかと発言した」と訴えた。





 係争委の決定や勧告に拘束力があるわけではない。ならば、なぜ国は係争委という第三者機関を設置したのか。裁判所は地方自治を尊重しているのか、疑問が残る。





 





■審理5カ月 十分か





 裁判所は国と地方は対等・協力の関係とする地方自治法の観点から、県と国が「互譲の精神」による協議で解決策を合意することが望ましいとする一方で、「代執行訴訟の和解から約5カ月が経過しても解決の糸口が見いだせないのが現状」として協議による合意は困難と指摘。速やかな審理・判断を下すのが裁判所の責務とし、承認取り消しは違法とする判決を下した。





 県は訴訟で、裁判所自らが和解勧告で「オールジャパンで最善の解決策」を模索するよう勧告したことを踏まえ、裁判ではなく協議の必要性を主張。さらに、和解後に国の第三者機関である国地方係争処理委員会も協議による解決が望ましいとの判断を下した点も強調した。





 判決は係争委の決定や勧告に法的拘束力がないことなどを理由に「係争委の意義は紛争の解決ではなく、争点を整理するためだけにある」と指摘。県が求める協議による解決ではなく、裁判での決着が必要とした。





 ただ、翁長雄志知事は裁判の中で「国との協議は1回が15分で発言の順番や話の内容も決まっていた」などと証言。裁判所がそもそも形式的な協議しかなされていないとする県の主張に耳を貸さず、「約5カ月」という期間をもって協議では解決策を見いだせないとし、早期に審理を終え判決を下した姿勢に疑問が持たれそうだ。









【解説】県に立証機会与えず





 「辺野古違法確認訴訟」の判決は、「辺野古唯一」とする国側の主張を一方的に採用した。取り消し処分を審査するに当たり、県側の立証を十分に認めておらず審理に不公平感が残る。また、担当事務以外でも国の地方自治体への関与を認めた判断からは、地方自治権が狭まらないかという不安がぬぐいきれない。





 県は「承認に瑕疵(かし)がある」と主張したが、裁判長は県側に立証する機会を十分に与えなかった。県側は国側の主張に法的な根拠はなく、沖縄の地理的優位性や海兵隊の一体的運用も否定している。にもかかわらず判決は、書面の審理のみで「沖縄に地理的優位性があり、海兵隊の航空部隊を県外に移転することはできない」と認定。県側の主張を切り捨てた。





 事実認定に踏み込むのであれば、県側が主張した安全保障や環境の専門家8人の証人申請を認めるべきではなかったのか。2回の口頭弁論で審理を打ち切った多見谷寿郎裁判長の姿勢は、事実の審理をせずに「国寄り」の判決を出したと言わざるを得ない。





 また判決は「担当する事務以外であっても、事務の処理が違法であれば関与できる」と指摘。都道府県に権限のある、法定受託事務への国土交通相の介入(関与)の権限を広く解釈した。





 ただ、国交相は運輸や航空などを所管する国の機関だ。権限行使に当たって、安全保障を公益と考慮することは、権限の乱用により許されない。判決の理論を援用すると、米軍基地建設のために海面を埋め立てる事業に、都道府県が反対しても不当に「国益」として押し切られることになる。





 「地方の自主性を尊重し、国の関与は最小限でなければならない」とした改正地方自治法の趣旨を、判決は踏まえているだろうか。(社会部・国吉聡志)


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