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40年廃炉が立地地域の経済直撃 原発の行方・第2章(1)

  • 2012年2月3日
  • 05:00
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運転開始36年、37年の2基もある関西電力高浜原発。40年で廃炉となれば福井県高浜町の財政や地元経済に大きな影響を与える見通しだ=2011年3月、同町田ノ浦(福井新聞社ヘリから撮影)
運転開始36年、37年の2基もある関西電力高浜原発。40年で廃炉となれば福井県高浜町の財政や地元経済に大きな影響を与える見通しだ=2011年3月、同町田ノ浦(福井新聞社ヘリから撮影)

 2015年度、関西電力高浜原発1、2号機が40年の運転制限を迎えて廃炉となった場合、福井県高浜町の財政は経常経費だけでも約1億円の財源不足に陥る-。

 東京電力福島第1原発事故を受け政府が脱原発依存にかじを切る中、高浜町は独自に財政のシミュレーションを行い、衝撃的な結果が出た。4基全てが廃炉になる25年度には年間7億円近くの赤字となる見込みだ。

 4基の原発を抱える高浜町は、関電から入る固定資産税や国の電源3法交付金、県からの核燃料税交付金などが歳入の大半を占めてきた。10年度決算でみると、歳入約81億6700万円に対し原発関連収入は約56%。相次ぎ原発が廃炉になれば影響は計り知れない。

 町は総合計画の柱にコンパクトシティー構想を位置付けているが、見直す必要性が出てくるという。電源3法交付金を使って建てたものの維持経費がかさむ“ハコモノ”を集約し、行財政を立て直す狙いもある事業だけに町としては何としてもやり遂げたいが、政策的な投資は一層の財源不足を招きかねない。

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 地域経済への打撃はさらに深刻だ。

 同町によると、嶺南に11基の原発を持つ関電が定期検査やメンテナンス業務などを外部発注する金額は年間約1500億円。このうち約180社ある嶺南の協力会社が受ける分は約175億円。民宿、タクシー、飲食業などに落ちる約35億円も含まれる。

 高浜1、2号機が廃炉になれば「単純に需要が半減する」というのが町の見方だ。野瀬豊町長は「立ち行かない地元企業が山ほど出てくる。元請けの大手でさえ、原子力の比率が100%ではないにしても、30%くらいあるから成り立たない」と危惧(きぐ)する。関電からの受注が売り上げの4割を占める建設業社長(60)は「原発がなくなれば倒産する」と漏らす。

 高浜原発4基の01年度から10年間の設備利用率は平均83%超と高い水準だ。この社長は、支えてきたのは地元の下請けだと強調。「消費地からは原発を動かしたいのはお金が欲しいからだとの声が聞こえる。確かに仕事は大事だが、日々のメンテナンスで絶え間なく電力を送ってきた」と強い自負をのぞかせる。

 原発の仕事がなくなれば、ほかの職を求めるしかなく、培った技術の喪失にもつながる。「経営が苦しくても熟練工を手放さず頑張ってきた」という協力会社にとって、一度人材を失ってしまえば「倒産と同じ」と悲壮だ。電力本体にとっても人材確保、技術維持の問題が生じる。

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 原則40年で廃炉となるのか。どこまで例外で20年延長を認めるのか。国の基準は不明で、渡辺孝高浜町議は現行制度より後退していると批判する。「経済の問題は確かに大きいが、いつ大地震が起きるか分からない。一日も早く廃炉にすべきだ」と訴える。

 これに対し野瀬町長は、廃炉の影響は地元にとどまらず、電気料金高騰により国内全体で産業空洞化が進むと指摘。大都市の税収が減少し、地方交付税の配分も減ると懸念を示す。悪循環を回避するには、大地震や津波のリスクが低い地域での原発のリプレース(置き換え)を進めるべきだというのが持論だ。

 一方、橘川武郎一橋大大学院教授(エネルギー産業論)は「リプレースが重要というだけでは(主張として)足りない。地元は原発なしの“出口戦略”を持ち、選択するかもしれないと思わせた方が、安全な原発を造ることにもなる」と強調。国や事業者に振り回されず、振り回す側になるべきだと発想の転換を提案する。

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 原発をピラミッドの頂点のようにして成り立つ立地地域の経済。東京電力福島第1原発事故を受け原発の運転停止が長引く中、「再稼働の遅れは死活問題」との悲鳴が上がり始めている。定期検査の作業自体は多くは終わっており、メンテナンスなどの受注が激減しているからだ。

 県は昨年11月、原発関連企業と取引のある嶺南の企業のうち168社を対象に調査を実施。「売り上げが減少した」との回答は約96%に上った。

 原発の運転や建設に大きく左右される要因の一つは、偏った産業構造にある。

 原発と地域経済の関係、将来展望を調べている県立大地域経済研究所によると、1971年に936億円だった嶺南の工業・製造品等出荷額は2007年には1787億円に増加したものの、県全体に占める割合は23%から8%に低下した。製造業の就業者数も7市町村のうち5市町村で減少率(70年~05年)が県平均を上回った。同研究所は「地域経済のキャパシティーが限られており、建設業や商業が伸びた分、製造業が発展できなかった」との見方だ。

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 総務省の09年経済センサスを基にした県の集計によると、製造業の従業者数構成比は嶺北の22・0%に対し、嶺南は12・0%と低い。越前、鯖江、坂井の3市では3割を超えるが、原発のある美浜、おおい、高浜町は6%前後にとどまる。唯一の例外は、電源3法交付金を活用して県が整備した若狭テクノバレー(若狭中核工業団地)を抱える若狭町の23・6%だ。

 逆に嶺南で目立つのは建設業の12・7%。嶺北の7・8%より高く、おおい町は県内最高の24・2%に達する。原発の建設・修理、加えて電源3法交付金を使った“ハコモノ”建設が建設業を伸ばしてきた。

 「原発建設の前後で経済の構造ががらりと変わる」と説明するのは福島大の清水修二副学長(財政学)。農林漁業は縮小し、第2次産業、特に建設業が膨張、電気事業を含む第3次産業が異常に大きくなるという「こまの形」をした産業構造になるのだという。

 なぜ地元の期待通りには産業のすそ野が広がらなかったのか。清水副学長は「電力は遠くで買っても近くで買っても基本的に同じ値段。製造業なら企業同士が近くにあれば輸送コストが浮くなどのメリットもあるが、発電所には企業の立地誘因がない」と解説する。

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 「過度に一つの産業に特化することは得意分野を持つという面と同時に、局面によっては経済が一気に落ち込む危険性を併せ持つ」。昨年12月の定例県議会で小浜市の西本正俊県議は、原発関連産業がこれまで嶺南の経済を支えた実績を認めつつも、構造改善が必要と訴えた。

 こまの形になった産業構造は不安定で、こまと同様に外から力を加える必要が出てくる―と清水副学長は例える。「倒れないために増設してくれという話が出る。だから抜け出せない」とも語る。その上で、国策として原発立地を進めた以上、原発依存からの脱却に向けた立地地域の取り組みにも国は相応の責任を果たすべきだと唱える。

 ただ、「脱原発」のうねりが立地地域に押し寄せ、大きな岐路に立つ中でも、長年にわたって出来上がった構造から脱却するのは容易でなさそうだ。

 嶺南のある経済団体幹部は直截(ちょくさい)的にこう語る。「地元は原発に依存する経済になってしまっている。原発廃止を望む声は地元にはない。共存共栄だ」


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