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二項対立でなく弱者視点を糸口に 原発の行方・プロローグ(9)

  • 2011年10月19日
  • 05:00
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東京で開かれた「さようなら原発5万人集会」と、国連で演説する野田佳彦首相(左上)、反省の弁が相次いだ日本原子力学会シンポジウム(右)のコラージュ
東京で開かれた「さようなら原発5万人集会」と、国連で演説する野田佳彦首相(左上)、反省の弁が相次いだ日本原子力学会シンポジウム(右)のコラージュ

 原子力がなければ幸福はないという人がいて、一方に原子力がある限りは幸福はないと思っている人がいる。互いの信念は相いれることなく、自らの主張を緩めて相手の意見を聞こうとしなかった―。

 原発をめぐり推進派、反対派の間では、かみ合わない論争、対立が続いてきた。

 そして「二項対立により原発のリスクは増大した」と指摘するのは「私たちはこうして『原発大国』を選んだ」などの著書があるジャーナリストで評論家の武田徹・恵泉女学園大教授。「一番選ぶべき、取りあえず1、2年先の安全を今より少しでも高める、という選択肢をどちらも選べなかった」というのだ。

 互いに不信感を抱くことで最適解を選択できない状況を「囚人のジレンマ」構造にも例える。

 もどかしさは多くの住民の中にもある。

 2011年9月、放射線被害をテーマにした福井市での講演会に参加した同県鯖江市の主婦佐々本真子さん(38)は「推進派と反対派の対立になってしまうのは悲しい。対立だけでは何も解決しない」と漏らした。

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 国内で現役の商業用原発は54基。わずか17のサイトに集中して造られている。武田氏は集中立地した経緯と現状を、二項対立により生まれたリスクの一つに挙げる。

 反対派の運動により新たな場所での建設が難しくなり、その代わりに既に立地した土地での増設を選択。地元にも抵抗感は少なく、受け入れられるからだ。

 結果として、例えば東京電力福島第1原発では同じ場所に6基が林立した。万一事故が起きても「1基で済んでいれば違った結果になった」と武田氏は考える。

 福島の事故後、推進側からも反省の声が相次ぐ。9月に福岡県で開かれた日本原子力学会のシンポジウムでは「日本は事故が少なく、安全神話が形成され、リスク評価が軽んじられてきた」(宮野廣法政大客員教授)などと、安全性を疑問視する反対派の意見に耳を貸さなかったことへの自己批判が聞かれた。

 反対派にも議論の転換が必要との声はある。原発設置反対小浜市民の会の中嶌哲演さんは「抽象的に全部止めろとか、反対反対と言っているだけでは済まない時期にきている」と強調。脱原発を選択しても地域が生き残れるビジョンを示す必要があると力説する。

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 「脱原発」と「推進」という二項対立でとらえるのは不毛―。野田佳彦首相は9月、就任後初の所信表明演説にこんな表現を盛り込んだ。ただ、実際に対立の構図、議論のすれ違いを解消するのは容易でなさそうだ。

 反原発をテーマに福井市で10月開かれた講演会で、質問に立った参加者からは「推進派は地球生命に対する敵」と感情的な言葉が飛び交った。

 一方、事故後も海外へ原発輸出を続けようとする政府の姿勢に「巨大な推進システムは簡単に引き下がろうとしない。政治家、官僚たちが態勢を立て直そうとしている」と中嶌さんは警戒する。

 囚人のジレンマ構造に風穴を開け、歩み寄る糸口として武田氏は「実在の人物から考え始め、弱者に視点を合わせることで論点を変えられるのでは」と話す。

 拙速に脱原発を選んだ場合、立地地域の住民、自治体は、よって立つ足場をなくし、原発で働く人は労働の場をなくす。一方的、暴力的なしわ寄せを生まないために、どうすればいいのか―。現場を起点にした手段やプロセス抜きには現実的、建設的な議論にならないと武田氏は提起する。(「プロローグ」おわり)


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