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国策協力の自負揺らぎ焦りと不安 原発の行方・プロローグ(1)

  • 2011年10月4日
  • 05:00
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基幹電源として原発の堅持を求める意見書を全国の立地自治体で初めて可決した福井県高浜町議会=2011年9月26日、同町議会
基幹電源として原発の堅持を求める意見書を全国の立地自治体で初めて可決した福井県高浜町議会=2011年9月26日、同町議会

 関西電力の原発4基が立地する福井県高浜町で2011年9月26日、町議会は基幹電源として原発の堅持を求める意見書を可決した。東京電力福島第1原発事故後、全国の立地自治体で初めてだ。定期検査を終え停止中の原発の再稼働だけでなく、高経年化(老朽化)した原発を新しい炉に置き換えるリプレース推進も求めた。

 「脱原発の声の嵐の中、早めに声を上げ、意見を申し上げたいというのが今だと判断した」と提案者の粟野明雄副議長。反対討論で共産党議員は「(福島では)古里を離れて避難している人もいる現状が続いている。事故から何を学んだのか」と批判したが、賛成12、反対1で押し切った。

 意見書は町民にも波紋を広げた。「全国に先駆け原発推進の意見書を可決したのは町民として恥ずかしく、福島の方に申し訳ない」と主婦の澤山たづ子さん(62)。「町は原発交付金に依存し、町内には『安全神話』がまだ残っている」と嘆く。

 一方、旅館を営む大谷博幸さん(46)は「安全対策は安心できるもの。もっと早く意見書を出してほしかった」。原発の停止が長引いて定検時の作業員らの宿泊が減っているといい、早期の再稼働を望んでいる。

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 高浜原発は1号機が営業運転を始めて11月で37年となる。地域経済や雇用、町の財政は原発抜きには語れない。脱原発の流れが急速に進めば、大きな影響が出る。

 高浜町は高浜1〜4号機が運転40年、45年、50年で廃炉になった場合の影響を試算している。4基全てが廃炉なら電源三法交付金や核燃料税交付金、固定資産税は大きく減り、一般会計の予算規模は現在の約75億円から50億円前後に減少するという。

 順次廃炉を迎え、新規建設もなければ、町の総合計画に盛り込まれている新規事業のほとんどは実施できなくなる−。野瀬豊町長は9月町議会でこう説明し「町の経済は壊滅的打撃を受ける」と語った。

 町議会が可決した意見書は、そうした焦り、いらだちを象徴している。

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 危機感は、他の福井県内立地3市町にも共通だ。

 4市町は9月17日、県原子力発電所所在市町協議会(立地協)として首長会議を開いた。「原子力は当分欠かせないエネルギー」(時岡忍おおい町長)、「国には原子力政策の今後の方向性を示してもらいたい」(山口治太郎美浜町長)といった意見が相次いだ。

 ただ、古里を追われた福島県民の気持ちや、原発に不安を抱く地元住民が少なからずいる点も頭に浮かぶ。現段階で推進を声高に叫べば「反感を買う恐れもある」(河瀬一治敦賀市長)と胸中は複雑だ。美浜、おおい両町議会は、検討していた意見書の審議を見送った。

 高浜町議会は批判も覚悟の上で、あえて声を上げた。野瀬町長はこう訴える。「風当たりは強くなるかもしれないが、誰かが一石を投じないとだめな局面に入っている」

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 「夏に向け早くも猛暑だ。電力の重要性を感じている」(6月、山口治太郎美浜町長)

 「福井県は関西の“血液”を供給する場所で、社会システム全体を動かす拠点」(7月、野瀬豊高浜町長)

 停止中の原発の再稼働にめどが立たず、関西圏で電力需給の不安がささやかれた時期、原発立地の首長らは「電力供給地として使命感」をたびたび口にした。国策に協力し、エネルギー供給を担ってきたという強い自負がのぞいた。

 1970年、日本原電敦賀1号機が営業運転を始めて41年。敦賀、美浜、おおい、高浜の4市町に計13基の商業炉が建設された。新型転換炉、高速増殖炉という研究炉も立地した。

 関西圏の電力の約55%は嶺南の原発から供給するという構造だ。「若狭の原子力があったから関西の経済は伸びた」と敦賀商工会議所の有馬義一会頭は誇らしげに語る。

 しかし、国策が揺らぎ、国策を支えてきた原発立地自治体の自負心は揺れ、焦り、いらだちに変わり始めている。

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 敦賀市議会は6月、「将来的に再生可能エネルギーに転換を図る」などとした意見書を特別委員会で可決した。将来的な脱原発を求める内容と受け取れるだけに、提案した今大地晴美議員(無所属)でさえ「まさか全会一致で可決されるとは」と驚いた。原子力のパイオニアを自認する敦賀市でも、従来通りの推進一辺倒でいいのかという不安、ためらいが芽吹いたかに見えた。

 しかし、波紋の大きさに慌てた議員らは再審議を求め、いったん可決した議案を否決するという異例の展開になった。

 「議員や住民の心の内にも原発への不安は当然あるはずだが、これが原発と生きてきた街の現状」と今大地議員は落胆した。いつの間にか思考停止のようになってしまって、“原発との共存”という路線の軌道修正がいかに難しいか、あらためて痛感したという。

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 昨年6月に閣議決定したエネルギー基本計画で政府は、原発による発電割合を2030年までに53%に高めるとし、原発推進を強く打ち出した。ところが福島の事故後、一転して依存度を下げる方向に向かっている。

 原子力政策大綱の見直しを議論するため3日、東京都内で開かれた策定会議で、全国原子力発電所所在市町村協議会(全原協)会長の河瀬一治敦賀市長は「福島の事故の反省は踏まえないといけないが、原発が『あるより、ないほうが安全』という浅い議論では、エネルギー政策を考えていくことにならない」と指摘した。

 電力消費地である関西圏の知事、市長らの脱原発発言も立地地域を困惑させた。有馬会頭は、リスクや風評被害を背負いながら電気を送り続けてきた立地住民への無理解としか映らなかったという。

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 外部の人間が立地地域の実情を踏まえず原発を止めろと叫ぶ姿には「暴力性への無自覚」がある−。福島の原発をテーマに戦後の経済成長、国と地方の関係に光を当てた著書「『フクシマ』論」で注目を集める東京大大学院博士課程の開沼博さん(27)=福島県いわき市出身=はこう論じる。原発を置きたい「中央の原子力ムラ」への批判はあっても、原発を置かれる「地方の原子力ムラ」の先行きを考えた議論がないことが問題というのだ。

 ただ、立地地域の産業や雇用が、原発なしには成り立たない構造になっているのも事実。「依存体質」との批判もつきまとう。

 原発問題に詳しいジャーナリストで評論家の武田徹恵泉女学園大教授はこう指摘する。「原発なしでもすむような社会構造を政府が提案しない限り、地元が生き残るには『原発』という選択肢しかない。脱原発は原発維持より難しい」


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