
東京電力福島第1原発の事故では、原子炉だけでなく使用済み核燃料の貯蔵プールでも冷却ができなくなったことで、多くの使用済み核燃料を抱える福井県内原発の貯蔵プールについても健全性が保たれるかの再確認や対策が必要との指摘が出ている。
原子炉で使い終えた使用済み燃料は、核分裂反応を終えても熱を放出し続けるため、核燃料再処理施設へ運び出すまでの間、原子炉建屋内にあるプールに入れ、40度以下に保った水で冷やし続ける。県内の各原発では現在、80~1452体が貯蔵されている。
福島第1原発では東日本大震災時に定期検査中だった4号機で、貯蔵プールの水温が異常上昇し、火災が起きた。プールの水位が下がり、核燃料が露出。水素爆発が起きたとの見方もある。
日本原電敦賀原発は、1号機のプールの深さが約11メートル、2号機は約12メートル。地震として現在想定している最大800ガルの揺れの強さで調べると、1号機の貯蔵プールにある約1千トンの水のうち約50トンがあふれ、水位は約60センチ下がる計算。2号機は約2700トンの水量から約40トンあふれ、水位低下は約16センチ。約4メートルの長さの使用済み核燃料は露出しないとしている。
現在の貯蔵状況で仮に冷却水の循環が止まった場合、1号機で通常約30度の水温は3日後には100度に達する。2号機は通常約16度で、100度になるのは8日後。この間に復旧作業や、ほかの系統からの注水を試みることになる。
関西電力は「(循環の)電源喪失が発生したとしても、プールには十分な水が貯蔵されている」とし、水温上昇は緩やかで、沸騰するまでに十分な対応ができるとしている。さらに「万一の時は、ディーゼル駆動の消火ポンプなどを使った消火水補給や、給水車などの利用も考えられる」と説明している。
日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」は120体の使用済み燃料を保管している。ナトリウムが入ったプールで冷やした後、洗浄して水のプールへ移す。現在はほぼ全数がナトリウムプールにある。
東日本大震災で被災した福島第1原発では、燃料を覆うジルコニウムと水が反応し水素が発生して爆発が起きた。原子力機構によると、もんじゅの燃料はステンレスで覆われており、ナトリウムとは反応しない。また、ナトリウムの沸点は880度と高く「保管している使用済み燃料は長期間冷やされているため、崩壊熱でナトリウムが蒸発するとは考えにくい」としている。
こうした現状に対し、県原子力安全専門委員会の中川英之委員長は「使用済み燃料貯蔵プールの健全性確保が非常に重要。今後の安全対策に十分盛り込んでいく必要がある」と話している。