東京電力福島第1原発事故に伴う避難者訴訟などを所管する原子力規制庁の訴訟対応の専任職員が、春の人事異動に伴い発足時の2012年度に比べて約4倍の計22人に増員されることが21日、分かった。担当部署のトップには検察官が新たに就く予定であることも判明した。
各地の避難者訴訟では、国は事故への責任があるとの判決が相次ぎ厳しい立場にある。規制庁は審理が迅速化すると強調するが、原告側の弁護士は「目的は国に責任はないとの主張を強化し勝訴することだ。訴訟で争わず救済を優先してほしい」と批判する。
原発を巡る訴訟は第1原発事故を境に、運転差し止めなどを求める訴訟に加え、避難者訴訟が新たに起き、原告の避難者や被災者らの総数は延べ1万人を超える。原子力規制委員会の再稼働審査が今後進めば、合格の原発も現在の7原発14基から増えることになり、再稼働差し止め訴訟なども増加する可能性がある。
規制庁は規制委の事務局として12年9月に発足。規制庁によると、発足時の専任職員は5人程度だったが、その後、弁護士経験者を募集するなどして増員。17年度は17人、18年度は22人となる予定という。
検察官を初めて招聘(しょうへい)した理由として「行政訴訟に詳しい検察官に対応を指揮してもらうことで、審理の迅速化を期待している」と説明している。
規制庁が所管する原発関連訴訟は3月1日時点で計45件。第1原発事故に伴う避難者訴訟などは29件で、地裁段階で判決が出た5件のうち、福島地裁判決など4件は「事故は予見できなかった」とする国の主張を退け、賠償を命じた。