
東京電力福島第1原発事故による強制避難を前に精神的に追い詰められて自殺したとして、当時102歳だった福島県飯舘村の大久保文雄さんの遺族3人が、東電に計約6千万円の賠償を求めた訴訟の判決で、福島地裁は20日、原発事故と自殺の因果関係を認め、東電に計1520万円の支払いを命じた。
判決理由で金沢秀樹裁判長は「避難を余儀なくされたことが自死の引き金となった」と指摘。「高齢だった大久保さんにとって、村に帰還できず最期を迎える可能性が高く、耐え難い苦痛を与えた」とした。
一方で、大久保さんが避難生活で家族に介護の負担を掛けるのを遠慮していたことなども相当の影響があったとして、事故と自殺の因果関係は6割とした。
原発事故の避難と自殺を巡る訴訟の判決は3例目。2014年と15年の福島地裁判決では、いずれも遺族側が勝訴しているが、避難前の自殺への賠償命令は初めて。
大久保さんの次男の妻で原告の美江子さん(65)は記者会見し、「良い判決をもらった。満足です」と述べた。東電は「判決内容を精査する」とコメントを出した。
判決によると、大久保さんは、美江子さんと孫(35)の3人で暮らしていた。事故前は週2回のデイサービスや、友人と自宅縁側での会話を楽しみながら過ごしていた。
事故から1カ月後の11年4月11日、村が計画的避難区域に指定されるとニュースで知り、美江子さんに「避難したくないな」「ちょっと長生きしすぎたな」と漏らした。翌12日朝、自室で首をつって自殺しているのが見つかった。