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方向性や全体像見えないエネ政策 原発の行方・第3章(5)

  • 2012年4月20日
  • 05:00
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核燃料サイクルのイメージ図
核燃料サイクルのイメージ図

 将来の原子力、火力、再生可能エネルギーなどの電源構成率はどうあるべきか―。エネルギー政策の見直しを検討する場の一つ、総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)の基本問題委員会で2012年3月末、五つの数字が示された。

 0%、5%、20%、25%、35%。

 2030年の発電電力量に占める原子力の割合を示した5通りの選択肢だ。「まるでバナナのたたき売りだな」とつぶやく福井県幹部。数字だけが踊っているように思えた。

 10年度の実績でみると原子力の割合は26%。政府は10年7月、原発の割合を30年までに53%に高めるとのエネルギー基本計画を打ち出したが、東京電力福島第1原発事故を受け、抜本的な見直しを迫られた。基本問題委は昨年10月に新設され、20回近く会合を重ねてきた。しかし、議論が収れんしていく気配はない。

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 示された5案は▽原発ゼロを目指す(0、5%)▽依存度を下げる(20%)▽基幹電源として活用(25、35%)−に大別される。25人の委員が私案を出し合い、事務局が取りまとめた。

 会合では「できるだけ再生可能エネルギーを増やす努力をして、原発は安全性を確認できたものを動かす」「再生エネの技術力を高めながら、消費者の支援を得ることが日本経済の発展を支えていく」などさまざまな意見が出ている。

 今後3案に絞り込み、夏をめどに新たなエネルギー基本計画を閣議決定する方針だ。

 ただ、それぞれのシナリオに基づいた場合「どんな社会的経費が生じ、エネルギー安全保障などの面でどういうリスクがあり得るのか」(県幹部)は具体的に示されていない。いわば「机上の計算」だ。

 委員の一人、一橋大大学院の橘川武郎教授(エネルギー産業論)は「何も議論しなくても誰でも考えつく数字。委員の意見はばらばらで一つに絞るのは難しい。国民に選択肢を示して終わるのではないか。ガス抜きみたいなもの」と率直に認める。

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 政府は原発の運転期間を原則40年に制限する一方、例外として1回に限り最長60年までの延長を認める方針。しかし、具体的な基準は明らかでない。新増設を認めるかも不明だ。

 将来の原子力の比率を考える場合、本来なら廃炉時期や新増設の扱いと表裏一体で議論されるべきはずが、大きな方向性は示されていない。

 脱原発を唱える飯田哲也環境エネルギー政策研究所長や原子力資料情報室の伴英幸共同代表ら8委員は、パーセントを示す数字でなく、目指すべき社会像、政策の方向性といった定性的な選択肢を示すよう求めている。

 原子力政策の全体像が見通せない中、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働だけを論議するさまは「木を見て森を見ず」の状態だ。しかも、エネルギー基本計画の見直し作業は、予定する夏には結論に至らない可能性もある。

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 使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、燃料として再利用する核燃料サイクルは、原子力政策の柱とされてきた。

 東京電力福島第1原発事故を受けたエネルギー政策の見直しにより、核燃料サイクルの行方も大きな焦点となっている。中でも、原発構内でたまり続ける使用済み核燃料、再処理の際に発生する高レベル放射性廃棄物など「核のごみ」をどう後始末するかというバックエンド対策は、解決が容易でない難題だ。

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 県内の商業炉13基の使用済み核燃料貯蔵プールには、管理容量約1万2千体に対し、約8100体(3月末現在)が保管されている。構外に搬出できない場合、2010年代後半には窮迫する。一時的に構外で保管する中間貯蔵施設についても関電の建設地はいまだ決まっていない。

 「電力消費地も痛みを分かち合うというか、分担をお願いしなければとも思っている」。西川一誠知事は14日、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働をめぐり枝野幸男経済産業相と会談した後の記者会見で、あえて中間貯蔵施設に触れ、「県外で」としていた従来の発言から大きく踏み込んだ。

 西川知事と同じように「電力を使う受益者も応分の負担をすべきだ」との意見は民主党内にもある。

 馬淵澄夫元国土交通相は2月、核燃料サイクル政策の凍結を求める提言をまとめ、その中で、沖縄を除く46都道府県に使用済み核燃料の保管場所設置を検討すべきだと指摘した。

 西川知事の発言を受け、関西圏の首長からは一斉に「電力消費地すべての自治体が検討するのは当然だ」(松井一郎大阪府知事)との声が上がったが、どこまで真剣に取り組むかは不明だ。

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 地下深く埋設処分することになっている高レベル放射性廃棄物も建設地選びは難航している。「場所の選定には自治体からは手が上がらない。(誘致に名乗りを上げる首長は)選挙で必ず負ける」。河瀬一治敦賀市長は2月、夏をめどにエネルギー基本計画と統一的に見直す原子力政策大綱の策定会議で、国の「適切な関与」では不十分だと強く訴えた。

 「核のごみ」の処理方法が確立していない現状について、おおい町の40代自営業者は「出口のない政策をなぜ進められるのか、素朴な疑問がある」と話す。

 しかも、埋設処分できたとしても、100年単位の長期的な管理が必要だ。「先祖が出したごみだけを将来管理しろと言っているようなものだ」。自民党の河野太郎衆院議員は15日、敦賀市内での講演でこう批判した。

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 核燃料サイクルは、中核となる二つの施設がそもそも軌道に乗っていない。青森県六ケ所村の再処理工場は何度も本格稼働が先送りされ、敦賀市の高速増殖炉「もんじゅ」は16年間ほとんど運転していない。

 原子力政策大綱の見直しに際して原子力委員会は、使用済み核燃料の全量再処理という現行方針に、ウラン燃料を原発で一度だけ使い、地中に埋める「ワンススルー」も選択肢に加えた。

 だが、核燃料サイクル政策を断念する場合も、新たな難題に直面する。国は「青森県を最終処分地にしない」と約束していて、再処理をやめれば核のごみは各原発に返送される恐れがある。他の場所で最終処分地が簡単に見つかるとは考えにくい。結果として、原発構内での使用済み核燃料の長期保管が続くことになる。

 突き進むことも、引き戻すことも難しい。バックエンド問題は暗く長いトンネルの中にある。


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