日本郵政が海外企業の買収で巨額損失を計上する恐れが表面化した。同じ日本企業では、東芝が米原発大手の損失で経営危機に陥ったほか、第一三共がインドの後発医薬品会社で品質管理を問題視されるなど海外の企業買収が「鬼門」になっている。人口減少を背景に海外事業の強化が叫ばれたが、買収後の管理の難しさや日本の経営者の経験不足が露呈したと言えそうだ。
問題となったオーストラリアのトール・ホールディングスは、日本郵政が上場する約9カ月前の2015年2月に買収を決めた。当時から6千億円超という買収額が「高すぎる」(金融筋)とされ、上場を成功させるために拙速に決めたのではと懸念されていた。
東芝が深刻な経営危機に陥る要因となった米原発建設の巨額損失は、昨年12月に発表する直前まで社長も把握できていなかった。買収した海外の企業に役員を送り込んでも、状況を管理できていない事例は多い。入札などで売りに出された海外の企業は、金融機関が日本の経営者に仲介して、買収が決まるのがほとんどだ。大手企業でも買収の専門家はほとんどいないのが実情で「金融機関の言いなり」とやゆされている。
国内市場の成長が見込めない中、海外に活路を見いだそうというのは妥当な判断だ。しかし、海外企業を経営する知見や人材が急に育たないのも確かで、買収を判断する経営者の責任が重く問われそうだ。