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即応性で揚水に脚光、供給の切り札 原発の行方・第7章(6)

  • 2013年6月4日
  • 16:13
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国内最大出力の揚水発電所、奥多々良木発電所の発電電動機室。夏場の供給力確保の切り札となる存在だ=兵庫県朝来市
国内最大出力の揚水発電所、奥多々良木発電所の発電電動機室。夏場の供給力確保の切り札となる存在だ=兵庫県朝来市

 東京電力福島第1原発事故後、全国的に深刻化した電力不足。需要が高まる夏場を中心に、供給力を確保するため電力会社の切り札となったのが揚水発電だった。一気に脚光を浴びた。

 揚水発電は、二つのダムの高低差を利用する。電力需要の多い昼間に上部ダムから下部ダムに水を落として発電する。需要が少ない夜間のうちに、下部ダムの水をポンプでくみ上げ、上部ダムに戻す仕組み。水のくみ上げには、火力発電所などで夜間に生じる余剰電力が使われる。いわば巨大な蓄電池のような役割を果たす。需要のピーク時に限った臨時的な供給力の上積みが本来の狙いだ。

 だが、関西電力は2012年5月に示した夏の節電計画で、4カ所に設備を持つ揚水発電をあらかじめ供給力確保のための電源として織り込まざるを得なくなった。同2月にすべて停止した原発の再稼働が当時は見通せず、限られた発電能力を有効に生かす観点から「ベース電源に組み入れる使い方」(関電)へと位置付けが変わったためだ。

  ■  ■  ■

 兵庫県朝来市にある関電の奥多々良木発電所は、国内最大の揚水発電所。上部の黒川ダムと下部の多々良木ダムの高低差は約400メートルある。両ダムを結ぶ直径5メートルの導水管3本に最大で毎秒100トンの水を放流し、山中の巨大な地下空間に広がる発電電動機室に送り出す。発電機6基の合計出力は、大規模原発をはるかにしのぐ193・2万キロワット。緊急時には、運転指令から約6分でフル出力に至る即応力が特長だ。

 昨夏は大飯原発3、4号機(福井県おおい町)が再稼働したものの「電力不足がいつ来るか分からず、常に備えが必要」(田口善康所長)という“非常事態”となった。上部ダムの水位は、通常レベルを超えて毎朝ほぼ満水まで蓄える高水位運転を維持。同8月は毎日稼働し、需要が高まる昼間のみならず、夜間まで出力数十万キロワットで運転するケースもあった。

 ただ結果的には、同8月の発電電力量は2億5500万キロワット時で、事故前の10年8月に比べ約4%減った。1日当たりの平均稼働時間も約9時間で2時間減少。「節電の効果が大きく、見込みよりも稼働させずにすんだ」(関電)ためだが、揚水には「多用はできるだけ避けたい」という特有の事情も背景にある。

 一つは、火力発電所のトラブルなど緊急時に対応する“最後の砦(とりで)”として、余力を残しておく必要性が挙げられる。それ以上にネックとなるのは、コストの問題。上部ダムの水を落として得られる電力量は、水をくみ上げるために必要な電力量より小さく、約3割のロスが生じる。

 田口所長は「上部ダムの水一滴は血の一滴」と出力調整のシビアさをたとえる。管内の需要を常時監視しており「供給力に対する需要予測が95%を超えたらフル稼働が必要。安定供給の使命だけは死守しないといけない」と責任感を口にした。

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 電力9社などが保有する国内の揚水発電所は計41カ所で、出力合計は約2624万キロワットに上る。全国的にも「需給の予備率を十分確保できない中、瞬時に発電できるメリットから注目を集めている」(電気事業連合会)。

 関電の今夏の需給見通しでは、大飯の2基が新規制基準に適合して運転継続できることを前提に、揚水の供給力を420万キロワットと見込んだ。節電の定着を踏まえ、ピーク時中心の稼働を想定している。しかし、仮に大飯原発の停止を求められれば、再びベース電源に組み入れることになりかねない。


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