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福島の汚染水、遠い抜本策 凍土壁では増加防げず

  • 2017年3月11日
  • 09:06
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凍土遮水壁の運転を管理する電気室で作業に当たる作業員=2月17日、東京電力福島第1原発
凍土遮水壁の運転を管理する電気室で作業に当たる作業員=2月17日、東京電力福島第1原発

 東京電力福島第1原発で、溶け落ちた核燃料(デブリ)によって汚染された水の増加が止まらない。抑制の抜本策とされた地中の氷の壁「凍土遮水壁」は想定ほど効果が出ず、敷地内には貯蔵タンクの増設スペースがあまり残っていないことから、東電は大型のタンクに置き換える「急場しのぎ」の対応を続けている。

 汚染水は、1〜3号機の炉心部分に冷却のために注ぐ水がデブリに触れて高濃度の放射性物質を含むことで発生し、建屋地下にたまっている。これらは抜き出して浄化処理して一部は再び冷却水として使用しているものの、建屋内には地下水も流れ込み、汚染水は増え続けている。

 凍土壁は1〜4号機の周囲約1・5キロの地中に凍結管を埋め込んで地盤を凍らせ、地下水の建屋流入を防ぐ対策で、国が建設費約350億円を投入した。

 東電は昨年3月に建屋海側から凍結を始め、その後、山側も一部区間を除いて凍結。東電や政府は、大半は凍ったとみている。ただ、建屋と海との間の敷地は、山側から流れてくる地下水の下流側に当たり、想定では、ポンプでくみ上げる地下水量が減るはずだったが、思うような結果が出ていない。

 また、燃料への注水量の低減や、建屋地下にたまる高濃度汚染水の抜き取りで汚染水の量を減らそうとしている。

 汚染水は現在、1日400トン程度増え、この1年の上積み分は約16万トン。総量は約96万トン(2月下旬時点)となり、敷地内の約千基のタンクで貯蔵している。東電はタンクの大型化などで毎日約500トン分の容量を増やしているが厳しい状況に変わりない。

 原子力規制委員会の田中俊一委員長は、タンクの汚染水のうち多核種除去設備(ALPS)で浄化したものは海に放出するべきだとの見解だ。ただALPSでは、普通の水素と科学的な性質がほぼ変わらない放射性物質トリチウムの除去はできない。海洋放出には地元漁業関係者らの懸念が強いが、東電や政府を含めた協議はほとんど進んでいない。

 東電 進まぬ脱国有化 膨らむ事故対応費用 事業分離で解体も

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後、実質的に国が管理下に置く東電の経営自立が遠のいている。現行の再建計画では今年3月末を脱国有化の道筋を決める節目と位置付けていたが、賠償など事故対応費用の増加で目算が狂い、国の管理は長期化する見通しだ。政府は東電改革に併せ電力業界の再編も促す構えで、東電の解体が進む可能性がある。

 経済産業省の試算で事故費用は21兆5千億円と、従来の想定から倍増した。このため東電の経営再建を議論する同省の「東電改革・1F(福島第1原発)問題委員会」は昨年12月にまとめた提言で、2019年度に改めて国の関与の在り方を判断するよう求めた。

 現行の再建計画では、国や原子力損害賠償・廃炉等支援機構による経営評価を経て、4月以降、国の関与を段階的に減らす道筋を描いていたが、先送りを迫られた。

 提言は、第1原発の廃炉や汚染水対策、賠償の支払いなどを「福島事業」とし、国が長期間管理することにした。発電や送配電、小売りは収益を稼げる「経済事業」として早期の自立を目指す。

 中部電力と組んだ火力事業に続き、原発や送配電事業も他の大手電力との再編を模索する。事故費用のうち、8兆円を見込む廃炉費は、東電が経営改革で捻出する。

 政府と東電は提言を踏まえ、再建のための「新総合特別事業計画」を見直す。ただ収益の柱となる柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働に、同県の米山隆一知事が慎重で、計画策定は難航している。

 東電は事故の賠償負担が膨らみ、経営危機に陥った。12年7月に国は原子力損害賠償支援機構(当時)を通じた1兆円の出資で過半数の議決権を握り、東電を事実上国有化した。13年12月には、廃炉や賠償の費用を11兆円と試算し、除染費の肩代わりや中間貯蔵施設への国費投入を決めた。

 事故費用は、倍増した今回の試算をさらに上回る可能性が高い。デブリの取り出しが始まるためだ。作業が難航し、東電への国の関与が長引くと、再建に向けて福島事業と経済事業の分離や業界再編の加速を迫られ、東電の事実上の解体が進みそうだ。

 電力業界再編 強まる圧力 再稼働停滞、自由化進展

 東京電力福島第1原発事故後の再稼働の停滞や電力自由化の進展で、経営が厳しい大手電力への再編圧力が強まっている。政府は国の管理下にある東電をてこに業界再編を進める考えだが、大手電力側は慎重姿勢を崩しておらず、せめぎ合いが続きそうだ。

 東電は昨年12月、安定的な収益が見込める送配電事業に関し、2017年に他の電力会社と協議を始め、20年代初頭に統合を見据えた共同事業体を設立する方針を示した。東電内には慎重論も根強いが、経営改革の柱として事業再編を促す経済産業省に押し切られた形だ。

 既に東電は中部電力と折半出資する「JERA(ジェラ)」を設立。両社は火力発電事業を完全移管する方針だ。

 経産省はJERAをモデルに原発事業の再編も画策。背景には電力自由化による競争激化に加え、原発再稼働が難しいこともある。福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉は、事故後1基も再稼働できておらず、沸騰水型を使う東電などの電力会社は苦しい経営が続く。

 ただ東電の柏崎刈羽原発(新潟県)の有力な連携候補に浮上した東北電力は、当面検討しないと表明。大手電力は事故対応費用の増加に苦しむ東電との連携に及び腰で、再編による東電改革の行方は不透明なままだ。

 賠償費 電気代に一部上乗せ 7.9兆円

 東京電力の経営再建を支援するため、経済産業省の「東電改革・1F(福島第1原発)問題委員会」がまとめた提言は、原発事故の賠償費の一部を新たに電気料金に上乗せするなど、国民負担の拡大を求めた。

 既に賠償費の一部は、沖縄電力を除く大手電力の電気料金に含まれている。しかし費用の試算が従来の5兆4千億円から7兆9千億円に増えたとして、電力自由化で新規参入した新電力と契約した消費者も負担することになった。

 原発を持たない新電力に切り替えた場合でも、2020年から標準家庭で月額18円を支払う。経産省は省令改正などで対応するが、国会の審議を経ない制度変更には批判も強い。

 8兆円と試算した廃炉費も電気料金への転嫁を検討したが、反発が強く断念した。ただ東電は、新電力などが支払う送電線の使用料(託送料)の値下げを抑制して費用を捻出するため、料金が高止まりする恐れがある。

 賠償や除染は、政府が13兆5千億円の無利子の貸付枠を用意し、費用を立て替える。税金で長期間にわたり金利分を負担することになる。

 除染廃棄物の中間貯蔵施設は既に国費が投入されている。帰還困難区域の除染も、東電が支払う原則を見直して国が負担する。電気料金や税による負担拡大で、家計へのしわ寄せが懸念される。

 一橋大院・山内弘隆教授 全額東電負担は非現実的

 ―原発事故の賠償費の一部が新たに電気料金に上乗せされるが。

 「賠償費は事故を起こした事業者が基本的に負担するが(費用が巨額で)全てを東京電力が出すのは現実的ではない。長く安定的に負担してもらうには、広く薄く負担する方法が望ましい」

 ―廃炉費は料金転嫁を見送るが、値下げを抑制して、東電が費用を積み立てる仕組みになった。

 「値下げの利益を受けられないという意味では消費者負担だ。ただ東電にはコスト削減をしようとの意図が働く。消費者が利益の全部を失うことにはならない。廃炉作業には不確実性が伴い、費用が見通せない面がある。東電が費用を積み立て、対応できるようにする制度の導入は当然だ」

 ―政府による東電の経営改革の議論には、拙速との指摘や情報公開が不十分との批判がある。

 「(自ら委員長を務めた)経済産業省の小委員会は公開で議論してきた。審議回数が少ないとの批判はあるかもしれないが、東電の状況が日々変わる中で、延々と議論するわけにもいかない」

 ―さらに消費者負担が増えることはないのか。

 「小委員会では、電気代に上乗せするやり方はこれで最後にしてほしいとの意見が強かった。それが基本と思う」

 やまうち・ひろたか 1955年千葉県生まれ。2000年から現職。専門は交通経済論や公共経済学。経産省の「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」委員長を務めた。


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