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再生エネルギー自給自足へ 原発の行方・第7章(1)

  • 2013年5月28日
  • 15:49
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風力発電の売電収益で、住宅用太陽光の普及などが進む高知県梼原町。手前右にあるのは、小水力発電で動く風車のモニュメント=2013年5月2日
風力発電の売電収益で、住宅用太陽光の普及などが進む高知県梼原町。手前右にあるのは、小水力発電で動く風車のモニュメント=2013年5月2日

 坂本龍馬の脱藩の里として知られ、四万十川の源流域にある高知県梼原(ゆすはら)町。山間部の豊かな自然に囲まれた人口約3800人の町が目指すのは、再生可能エネルギーによる「電力自給率100%のまち」だ。

 同町中心部から車で約40分。標高約1300メートルの四国カルストの高原に上ると、白い巨大な風力発電2基が現れた。年平均風速7・2メートルという国内屈指の風況を生かすため、町が1999年に建設、稼働した。2基の出力は計1200キロワット。四国電力に売電し年平均約3500万円を得ている。

 売電収入は町の「風ぐるま環境基金」に積み立て、住宅用太陽光や太陽熱温水器、個人用の小水力発電の設置補助金などに充てている。中でも太陽光に対する補助は出力1キロワット当たり20万円、上限4キロワットで80万円と全国一の手厚さ。住宅への普及率も6%台と全国平均を大きく上回っている。

 さらに、町内を流れる梼原川では小水力発電も運営。昼は近くにある中学校舎の消費電力の9割を賄い、夜間は街路灯82基をともす。

 「地域の自然から生まれたものは、住民に還元するのが基本」と矢野富夫町長。まちづくりの基本理念「共生と循環の思想」の下、風や光、水、森といった自然の地域資源を無駄なく生かす発想が原点にある。

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 町の電力自給率は2012年度で28・5%。50年には100%を目指す計画だ。出力2千キロワット級の風力発電が4基あれば達成できるが、矢野町長は「四国カルストで将来40基まで増やしたい」と意気込む。昨年7月に始まった再生エネルギーの固定価格買い取り制度も町の売電収入を押し上げる見込みで、住宅用太陽光や小水力の普及にさらに力を注ぐという。

 自然エネルギーの効率的な利用は発電に限らない。森の間伐などで出る端材から木質ペレットを生産する工場を第三セクターで運営し、町内の事業所や学校の暖房燃料に使用。地中熱利用の温水プール、エアコンを使わない木造モデル住宅の促進など事業は多彩だ。

 いずれの事業も町中心の運営。「外部の事業者に任せても売電収益などが都市部に流れるだけ。地方はエネルギーを自給して自立することが重要」と町担当者は力を込める。

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 東日本大震災、東京電力福島第1原発事故では大規模集中型の電源を中心とした社会システムのリスクが浮き彫りになった。事故後、全国各地で「エネルギーの地産地消」を目指した再生エネルギーの普及が進む。

 11年度の国内発電電力量のうち、水力を除く再生エネルギーの割合は1・4%。現在の技術で基幹電源となるのは難しいが、梼原町のように自然豊かな地域には導入の余地がある。地域活性化や経済波及といった魅力も秘める。福井県が市町ごとに協議会をつくり展開する「1市町1エネおこし」事業も、エネルギー源の多角化や地域活性化の狙いがある。

 再生エネルギーに詳しい新妻弘明東北大名誉教授は「エネルギーを外部に依存する社会になり、地域エネルギーの持つ大きな価値を失ってしまった」と指摘。再生エネルギーを地域に即した使い方で最大限利用する社会を築けば、地域経済や豊かな生活、災害時のエネルギー安全保障にも貢献すると強調する。

 その上で「再生エネルギー導入そのものを目的化するのではなく、地域のなりわいや自然の再生を含めた取り組みが重要」と付け加えた。

 再生可能エネルギー普及の起爆剤として導入されたのが、昨年7月に始まった固定価格買い取り制度。太陽光や風力などで発電した電気を電力会社に固定価格で一定期間買い取るよう義務づけ、買い取り費用は電気料金に上乗せされる。再生エネルギーへの投資が確実に進むようにし、急速に普及させていくのが狙いだ。

 制度開始に伴い、全国で企業や自治体などの発電事業への参入が加速。最初3年間は参入事業者の利益に特別に配慮すると法律に明記され、高めの買い取り価格設定が後押ししている。

 「長年安定した売電収入が見込め、確実性がある。やはり買い取り価格が大きい」。大規模太陽光事業を始めたマルツ電波(本社福井市)の担当、内田陽平さん(35)はメリットをこう語る。

 同社は坂井市など3カ所で計2800キロワットのメガソーラーを計画。既に1カ所の売電を始めた。価格が20年間固定されるため、日照で不利な本県でも採算が取れるという。

 買い取り価格や期間は毎年、経済産業省の調達価格等算定委員会が検討する。委員長の植田和弘京都大学院教授は「福島第1原発事故を受けて国民的に必要性が認識され、新産業として育成するためにも重要だ」と強調する。

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 経産省資源エネルギー庁の全国統計によると、買い取り制度により、昨年4月から今年1月末までに運転開始した再生エネルギーの合計出力は139・4万キロワット。ほぼ大型の原発1基分に相当する設備容量だ。うち9割超を太陽光が占めている。

 太陽光は他の再生エネルギーに比べ、環境アセスメントや特別な規制もなく、時間を掛けずに設置できる。特に北海道では広大な土地が安く手に入るため、メガソーラーの“投資バブル”が起きているほどだ。

 ただ北海道電力は4月、出力変動の大きい太陽光を大量に受け入れると電力供給が不安定になるとして容量制限を発表。買い取り制度で認定を受けても売電できない例も出てきた。植田教授は「申し込み順で発電を認めて容量制限すると、太陽光で埋まってしまう。安定電源の地熱やバイオマスが入る余地がなくなる恐れもある」と危ぐする。

 電力会社の送配電網の容量不足という課題もあるが、新妻弘明東北大名誉教授は、買い取り制度の“早いもの勝ち”を問題視。「大資本に有利な制度で経済性だけが追求され、地域にメリットが及んでいない」と指摘する。

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 再生エネルギーの普及と、家庭や企業の負担増のバランスも課題だ。買い取り制度で先行する欧州では電気料金の大幅な値上げで国民の不満が強まっている例もある。

 2022年末までの脱原発を掲げるドイツの場合、00年に本格的な買い取り制度を導入し、昨年は再生エネルギーの全電源に占める割合が20%を超えた。一方で、国民の負担金は標準家庭で月1500〜2千円にまで増えているという。同国は負担金が際限なく増える制度を抜本的に見直す方針を示している。

 日本でも経産省は5月から来年4月まで各電力管内の電気料金に上乗せされる額の全国平均が、標準的な家庭で月約120円になると試算。前年の87円から1・4倍に増えた。

 植田教授は「国民負担が無意味に大きくなることは避けなければならない。そのためにも買い取り価格の設定を含め、制度の進行管理が重要だ」と強調した。

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 全国で原発の長期停止が続いている。火力発電や再生可能エネルギーは代替電源となり得るのか。電力システム改革や省エネ、節電も含め、その実力、課題を探る。


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