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安全評価「机上の計算」批判浴び 原発の行方・第3章(2)

  • 2012年4月14日
  • 05:00
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福井県内商業原発のストレステスト1次評価提出状況
福井県内商業原発のストレステスト1次評価提出状況

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)は、地震に対しては想定した最大の揺れの強さ(基準地震動)の1・8倍となる1260ガル相当まで、津波は想定高の4倍の11・4メートルまで、核燃料が損傷せずに耐えられる―。停止中の原発再稼働の前提として行われたストレステスト(安全評価)の1次評価結果だ。

 関電が提出した評価結果を経済産業省原子力安全・保安院は「妥当」と認め、原子力安全委員会も評価方法を「適切」とした。

 しかし、福井県をはじめ立地自治体からは「机上の計算」「ストレステストだけでは不十分」と批判を浴び続けた。

 結局、政府は「新安全基準」を決定。1次評価は安全性判断の材料の一部にすぎず、十分条件ではないと認めた形だ。

 時間と労力をかけて延々と手続きが進められてきたストレステストとは一体何だったのか。

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 ストレステストは昨年7月、欧州連合(EU)での導入を参考に当時の菅直人首相が実施を突如決めた。1次評価は、想定を超える地震や津波に対し、安全上重要な設備が設計上どの程度の余裕を持つかをコンピューターで解析する。2次評価は、炉心損傷を起こし過酷事故になった場合など、設計上の余裕を超えて実際にどこまで耐えられるかを調べる。

 テストは本来、原発ごとに弱点を見つけ、継続的に改善するのが目的。再稼働の条件としているのは日本だけだ。

 国の意見聴取会委員として大飯3、4号機の1次評価を審査した元原子力プラント設計技術者の後藤政志氏は「安全性を保証するものではない」と指摘。人為ミス、機器の欠陥や劣化、台風などの外的要因がない前提の理想的な状態で解析しており「机上の評価」にすぎないというのだ。

 さらに、地震、津波に対する余裕がどれだけなら安全といえるかの“合格基準”は示されず、県は「結果を再稼働判断にどう生かすかの基準が不明確」(西川一誠知事)と疑問を投げ掛け続けた。

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 「1次と2次はセット。安全宣言をするつもりはない。再稼働とは無関係」。原子力安全委の班目春樹委員長は2月にこう発言。波紋を広げた。

 2次評価はEUのテストに近く、より重要と考える専門家は多い。班目委員長も「2次は究極的な余裕がどこまであるかを評価。検討の深さが違う」と説明する。

 しかし、安全委は評価結果を二重チェックする立場。当事者が人ごとのようにテストの意味に疑義を唱える姿に、立地自治体はとまどった。

 2次評価は、昨年末が提出期限だった。しかし、どの電力事業者も着手さえしていない。保安院は「重要性は認識しているが、具体的に2次で何を促し、何を追加で求めるかは検討段階」とするだけだ。

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 「コンピューターの解析だけで評価し、さらに机の上でチェックして『はい、OK』というのは納得できない。消防が民宿を訪れて防火査察するように、世間一般の常識なら、現場をチェックしないと安全確認にならないはずだ」

 関西電力大飯原発の足元、おおい町大島に住む無職大道定雄さん(67)は3、4号機のストレステスト(安全評価)1次評価について、こう疑問を呈した。二重チェックした原子力安全委員会は現場を見てさえいないと憤る。

 ストレステストは国民の安心を得るため導入したはずだった。しかし、政府側にも「一般の人に分かりづらい」(原子力安全委員会の班目春樹委員長)との声があった。

 経済産業省原子力安全・保安院による1次評価の方法が妥当か1月に検証した国際原子力機関(IAEA)の調査団も、課題として「テストの実施または審査において何を期待するかを明確にすべきだ」と勧告した。

 テストは、住民の「安心」を担保する材料とは言い難かった。

 結局、基準、目的があいまいとの指摘を受け入れる形で、政府は新安全基準を決めた。

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 関電が保安院に提出した大飯3号機の1次評価結果の報告書は700ページ余り、厚さは6センチにも及ぶ。設備・機器に関する膨大な解析データの表や、分析図が記載されている。明らかにしていないが、相当のコスト、労力がかかっている。

 テストの意味について保安院は「プラントの弱点の把握や改善のためのツールとして有効」と説明する。

 関電の担当者は「東京電力福島第1原発事故を受けて行った緊急安全対策で安全性の向上につながった効果が、評価で確認できた」と語る。例えば、地震に対しては対策前の1・75倍から余裕度が約3%向上。津波も4・65メートルから約145%アップしたという。

 ただ、その信頼性は、あくまで「机上の計算」の範囲内だ。

 1次評価の報告書で関電は、全交流電源喪失に陥った場合に炉心の冷却手段が確保できる時間を「16日間」と評価した。しかし保安院は、地震と津波が重なって起きる事態を考えた場合、給水時の水源となる一部のタンクの耐震性が低く、期待できないとして、審査書では「7・2日間」と改めた。

 関電は「あくまで全交流電源喪失のみの評価」と弁明するが、福島の事故の教訓を踏まえれば、地震と津波に同時に見舞われると想定するのが一般的な感覚だろう。

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 原子力安全委も審査の過程で、さまざまな課題や改善点を指摘した。

 複数基が並ぶ原発で1基が炉心損傷に陥った場合、他の原子炉で事故対応ができるか、検討を求めた。人員の確保や配置を含めた緊急時の対処能力も検証されておらず、より系統的に示すよう注文を付けた。

 また、現場の手動操作に依存する部分は、作業環境の変化を想定した複数のアクセスルート確保や、失敗した際の代替策を考慮すべきとした。

 「机上の計算」を、いかに現実的な安全策につなげるのか、という重い問いかけだ。

 そして何より、住民が納得できるのかが問われる。


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