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「原発のまち」パイオニアの不満 「原発マネー」40年(1)

  • 2010年5月25日
  • 15:09
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3基の炉が並ぶ関西電力美浜原発。1号機(上)が11月で運転開始40年を迎えるのを前に、町内には増設を求める声もある=2010年3月12日、福井県美浜町丹生
3基の炉が並ぶ関西電力美浜原発。1号機(上)が11月で運転開始40年を迎えるのを前に、町内には増設を求める声もある=2010年3月12日、福井県美浜町丹生

 福井県内で原発が運転を始めて40年。自治体や住民にはさまざまな形で「原発マネー」がもたらされた。生活の基盤を底上げする一方、原発への依存は強まっている。立地地域の今を見つめた。

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 国内初の加圧水型軽水炉として関西電力美浜原発1号機が立地し、2010年11月で運転開始40年となる福井県美浜町。「トップランナーはいろんな面で苦労がある」。山口治太郎町長の胸中には自負心と不満が複雑に絡まっている。

 理由の一つは、電力の安定供給を目指し、原発を立地した自治体などに交付される「電源三法交付金」にある。

 同制度が創設されたのは1974年度。美浜1、2号機はそれ以前から稼働を始めたため、原発の設置工事から運転開始5年後まで配分される交付金を受けられなかった。交付期間が「運転開始5年後まで」とされたのは80年度からで、76年度に運転開始の美浜3号機に対しても、交付は74~76年度の3年のみ。総額は6億5700万円で“満額支給”された大飯3、4号機の98億7300万円に遠く及ばない。

 1月、敦賀市で開かれた増子輝彦経済産業副大臣との意見交換会で、山口町長はこう漏らした。「マラソンに例えると、ペースメーカーが良い記録を出しても記録として認められないのと同じ」

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 美浜原発の総出力が他の原発より低い点も格差の一因だ。交付金の多くは出力を基に配分額が算出される。また、事業者から町に入る固定資産税額の多寡にも影響する。

 美浜の3基の合計出力は166・6万キロワット。高浜の4基の339・2万キロワット、大飯の4基の471万キロワットとは大きな差がある。同じく先行立地した敦賀市は4基の出力合計こそ196・2万キロワットと少ないものの、高速増殖炉「もんじゅ」に関連した各種交付金は膨大な額だ。

 この差は、財政力の違いとして表れている。2008年度の美浜町の財政力指数(3カ年平均)が0・79。原発のない県内5町は0・45以下だが、高浜町1・01、おおい町1・11、敦賀市1・14に比べれば見劣りする。山口町長は「初めから大きい原発を造るわけにいかなかった。3基も立地していながら美浜町の指数が1を超えたのは3年だけ」と嘆く。

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 交付金を元手に建てたハコモノの維持管理費が膨らみ、財政が硬直化しているのは高浜町だ。電源三法交付金が加味されていない数字とはいえ経常収支比率は08年度で99・5%まで悪化した。野瀬豊町長は「年間の交付金約17億円のうち、投資的な部分に使えるのは4億円ほど」と苦しい台所事情を説明する。

 義務的経費の縮減を目指し、同町は行政機能を集約するコンパクトシティー構想を進める。公共下水と集落排水の統廃合、道の駅シーサイド高浜の運営管理の民間移行などスリム化に懸命に取り組むが、原発依存からの脱却は容易でない。「いったんメタボリック体質になったら、ダイエットの努力はするが絶食はできない」と野瀬町長は皮肉交じりにたとえる。

 「原発への依存体質」を問われ山口町長は、自動車など製造業の工場誘致を例に挙げ「原発だけが問われる理由が分からない」と反問する。野瀬町長ともども「原発は地場産業」と語る。

 さまざまな恩恵が先細る中、古い原発は廃炉にして新たに増設するリプレースを視野に入れる点でも両町は同じ。「ポスト原発は原発で」ということだ。

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 北陸自動車道敦賀インターチェンジ付近の山あい近く、豪華な外観が目を引く温泉施設「リラ・ポート」。敦賀市が2002年に建設した。「天然温泉が特に好評で、毎日来る常連客も多い」と小野川昭弘営業支配人。09年度は22万3千人が利用した。

 建設財源には電源三法交付金が充てられ、1998~02年度に24億3千万円が投入された。

 ただ、オープン以来、経営は赤字続き。料金を計画段階より引き下げて営業を始めたことも影響したという。市は09年度に指定管理者制度を導入したが、それまでの累積赤字は7億2400万円に膨らんでいた。

 市観光まちづくり課は、市民をはじめ年間20万人以上が利用する点を挙げ「公共施設の中では良い施設だと思う」。小野川さんは人件費圧縮などの営業努力を強調する。

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 野球場や総合体育館、テニスコートを備える美浜町総合運動公園、おおい町の海洋レジャー施設「うみんぴあ大飯」、温浴施設やレストランを完備する道の駅シーサイド高浜…。リラ・ポートに限らず、原発の立地市町には豪華な施設が立ち並ぶ。

 海、湖といった嶺南の豊かな自然や、自治体の規模とは不釣り合いとも思える“ハコモノ群”。財政的な基盤となっているのは、35年間で3041億円がもたらされた電源三法交付金、本県が全国に先駆け76年度に創設した核燃料税などの「原発マネー」だ。

 道路、保育所、公民館、キャンプ場など暮らしに密着した施設やインフラにも使われた。しかし、原子力資料情報室の西尾漠共同代表は「交付金がなくなってもやっていける町づくりを進めるべきだったが、実際には目先のことに使われ続けてきた」と批判する。施設の赤字や維持管理費は財政的負担として重くのしかかるが、西尾さんは「必然だ」と手厳しい。

 ハコモノ行政を助長したのは、交付金の使途が03年度の制度改正まで公共施設や道路の整備などハード事業に限定されていたから。それでも、野瀬豊高浜町長は「他の自治体から見ると浮世離れしたことに使っている面はあった」と認める。

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 交付金が産業や地域の自立を促すより、むしろ依存度が強まる傾向にある。

 県は10年度、受け取る資格を持ちながら06年度の創設以来“封印”してきた核燃料サイクル交付金と原子力発電施設立地地域共生交付金の活用に乗り出す。高浜町など地元の強い要望を受けての措置だ。数年間で総額160億円の交付を見込んでいる。

 両交付金をはじめ、電源三法制度は交付金の新設と統合を繰り返し、現在は19種類からなる。県電源地域振興課の清水英男課長は「交付金は何の理屈もなく創設されているわけではなく、プルサーマル計画の推進などそれぞれ意味がある」と説明し、安易な依存ではないとする。

 しかし、原発反対県民会議の吉村清代表委員はこう批判する。「カネをもらえば何でも引き受けるという『たかりの構図』。原発マネーは麻薬みたいなものだ」


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