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滋賀県が原発防災で独自先行対策 原発の行方・第2章(9)

  • 2012年2月15日
  • 05:00
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滋賀県が昨年6月に防災危機管理局内に編成した原子力防災チーム=2012年2月7日、大津市の滋賀県庁
滋賀県が昨年6月に防災危機管理局内に編成した原子力防災チーム=2012年2月7日、大津市の滋賀県庁

 福井県敦賀市の日本原電敦賀原発から滋賀県境まで約13キロ、福井県美浜町の関西電力美浜原発から琵琶湖の北端までは約27キロ。「福井のリスクは琵琶湖のリスクだ」。東京電力福島第1原発事故後、嘉田由紀子滋賀県知事は近畿1400万人の水源となる琵琶湖が汚染されることの危機感を重ねて訴えてきた。

 滋賀県が2月3日にまとめた地域防災計画の見直し案では、防災対策の重点地域となる「緊急防護措置区域(UPZ)」を、原発から最大43キロの範囲まで拡大した。国の目安は30キロ圏内。原発の隣接県でありながら、独自に広く設定するという都道府県で初の試みだ。

 拡大の根拠となったのは、県独自に行った放射性物質の拡散予測。福井県の4原発で福島第1と同規模の事故を想定し、大気汚染の予測システムを応用して飛散量の最大値を算出した結果、高島市と長浜市の一部で甲状腺被ばく線量が屋内退避を必要とする100〜500ミリシーベルトに達する−。予測に基づき県版UPZの人口は、30キロ圏内の約4万人から5〜6万人に膨らんだ。

 「原発事故に県境は全く関係ない。立地県に先んじて対策を進めるのも当然」と県防災危機管理局は強調する。

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 滋賀県は従来、国が定めてきた防災対策重点実施地域(EPZ)10キロ圏外に位置し、地域防災計画で住民避難が必要になる事態は想定してこなかった。長浜市の観光スポット「黒壁スクエア」の飲食店で働く女性(60)は「原発を意識したことなんて今までなかった。まさかここまで危険が及ぶとは」と戸惑いを隠さない。

 防災体制も形ばかりだった。放射線監視のため長浜市と高島市の4カ所に県が設置していたモニタリングポストは、機器更新に多額の費用がかかるとして2010年度に運用を停止。福島の事故を契機に両市の住民から不安の声が上がった。

 現在は月2回、モニタリングカー1台による巡回監視をしており、年度内に1台増設を予定。UPZの拡大に伴い、モニタリングポストの再設置や防護服、線量計の配備を国に求めるという。防災危機管理局の職員からは「これまで原発に無関心すぎた面がある」との反省も漏れる。

 昨年6月、局内に職員6人体制で「原子力防災チーム」を発足させた。原子力を専門に学んだ経験を持つのは、9月に採用された週3日勤務の嘱託職員2人だけだ。

 防災計画見直しを担当するのは福井大大学院で原子力・エネルギー安全工学を専攻する柏貴子さん(27)。「対象分野は多岐にわたるので、自分だけでは対応できない」と手探り状態だ。

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 福井県内の原発について滋賀県は3事業者に安全協定の締結を求めている。目指すのは立ち入り調査、運転再開の協議など立地県と同等の権限。防災危機管理局の若林健参事は「県民の安全を確保するには社会的な発言力が必要」と説明する。協定をめぐる歴史、蓄積などの違いから「立地並み」は難しいとの見方は強いが「“3・11”以降は新たな局面に入ったことも考慮すべきだ」と若林参事は語る。

 ただ、協定を基に得た情報を的確に生かせるかという点でさえ、原子力専門の人材に乏しい滋賀県にとっては大きな課題だ。若林参事は「原発を停止させる判断を迫られても、その能力自体がない。実際の判断は福井県に任せる部分が出てくる」と限界を口にした。

 防災計画の見直し案では、収集した情報を正しく伝えるリスクコミュニケーションの充実が柱の一つに盛られた。見直し検討委員会の委員で福井県原子力安全対策課OBの寺川和良福井工大教授は「通常の防災計画なら当然含まれるべき項目」と指摘。「これまでは防災計画があっても機能していなかった可能性がある。態勢づくりはまだまだこれから」とみている。


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