福井と沖縄、原発と基地のニュースサイト

不信の連鎖、核燃サイクルを直撃 史上最悪11人死傷・美浜原発事故(下)

  • 2004年8月13日
  • 18:51
  • Twitterでシェア0
  • Facebookでシェア0
  • Google+でシェア
  • 0

 国のエネルギー政策への貢献度では全国で筆頭格の福井県。それだけに今回の事故は「裏切られた」との気持ちだったに違いない。西川一誠知事は二〇〇四年八月十二日、福井県庁に呼んだ関西電力の藤洋作社長に対し「県民を代表して憤りを伝える」と切り出した。「長い間築いてきた県民の信頼、安心を根底から覆した。日々取り組んできたことを台無しにした」。謝罪の言葉を繰り返す藤社長より、知事の表情の方が沈痛に見えた。

 電気事業連合会に会長を送り出している関電自らが、原発への逆風を増幅する結果になった。直撃を受けるのは国の政策の根幹である核燃料サイクル。中軸に位置するプルサーマルや高速増殖炉「もんじゅ」に影響が及ぶのは確定的だ。

 ■またも悪循環

 一九九五年、もんじゅナトリウム漏れ事故。

 九九年、茨城県東海村のJCO臨界事故。

 二○○二年、東京電力の原発トラブル隠し。

 この十年間だけを振り返っても、原子力の事故と不祥事は繰り返されてきた。その都度国民の信頼は大きく揺らぎ、原子力政策は停滞、本県が受け入れた計画は何度も後退した。

 今年三月、西川知事は「三点セット」とされる原発課題に一定の区切りをつけた。

 燃料データのねつ造で宙に浮いていた高浜原発のプルサーマル計画を認め、関電は燃料調達の手続きを進めてきた。これまで多くの曲折を経てきた敦賀原発3、4号機増設はようやく準備工事に着手。もんじゅは改造工事入りの是非こそ示されていないが、判断材料となるエネルギー研究開発拠点化計画作りが始まった。

 そうした矢先、関電の安全管理の不備から運転中の原発で十一人もの死傷者が出た。沈静化していた不信感は再び”沸点”に達し、悪循環がぶり返した。

 ■ずたずたの輪

 事故前から、核燃料サイクル路線は逆風にさらされていた。使用済み燃料の再処理コストをめぐり、経済産業省をはじめとする試算隠しが発覚したせいだ。今回の事故により、サイクルの輪はずたずたになりそうだ。

 プルサーマルは東電のトラブル隠しによって新潟、福島両県では既に白紙状態。頼みの綱だった本県で止まれば、二○○七年の実施は絶望的だ。

 地元の高浜町には「事故は一次系じゃないし、プルサーマルとは関係ない。第一、国策なんだから」との空気もあるが、所管大臣である中川昭一経済産業相自らが”保留やむなし”の見解を表明、遅延は必至となった。

 美浜町が誘致に名乗りを挙げた使用済み燃料の中間貯蔵施設も、可能性は限りなくゼロに近づいたように見える。同町には「今は事故対策を優先する時期だが、施設の必要性は変わらない」として凍結や先送りとする雰囲気はないが、県はもともと県内立地に否定的。関電への信頼が崩れた今、協議に応じる余地はなさそうだ。

 ■国にも厳しい目

 「放射能漏れはなかったが、原発の主たる機能に直接かかわる大事故」。十一日に現場を視察した原子力安全委員会の鈴木篤之委員長代理は、今回の事故の性格を端的に説明した。

 事故発生の直後は「原子力事故とはいえない。単なる労災だ」と強弁してきた国も軌道修正。原子力安全・保安院は全国のすべての商業炉に対し、配管の減肉検査体制をチェックして報告するよう求めた。関電が「火力でも起こりうる事故」と語った通り、事故の影響は原発だけにとどまらず、火力発電所にまで飛び火している。

 事故、不祥事のたびに、問われる電力業界の体質。そして、監視役の国にも厳しい視線が注がれる。不信の連鎖は、原子力政策全体に暗い影を落としている。


基地 from 沖縄 カテゴリーニュース

原発 from 福井 カテゴリーニュース

原発 from 福井 カテゴリーニュース

基地 from 沖縄 カテゴリーニュース