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高浜原発運転差し止め、識者に聞く 新藤宗幸氏、豊田正和氏 

  • 2016年3月11日
  • 10:54
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新藤宗幸氏

 しんどう・むねゆき 1946年神奈川県生まれ。中央大大学院修了。立教大教授や千葉大教授などを歴任し、現職。専門は行政学で、著書に「司法官僚」などがある。
新藤宗幸氏  しんどう・むねゆき 1946年神奈川県生まれ。中央大大学院修了。立教大教授や千葉大教授などを歴任し、現職。専門は行政学で、著書に「司法官僚」などがある。

 高浜原発3、4号機の運転を差し止めた大津地裁の決定。その意義と影響を専門家に聞いた。(1面に関連記事)

厳格立証 今後に影響 後藤・安田記念東京都市研究所理事長 新藤 宗幸

 最高裁は四国電力伊方原発訴訟の判決で、原発の安全性は行政庁の許認可に不合理な点があるかどうかで判断するという枠組みを示し、ずっと踏襲されてきた。

 しかし、裁判官が専門外の原子力工学で不合理な点を認定するのは難しいし、そもそも判断の枠組みに生活者の観点が欠けている。

 9日の大津地裁決定は最高裁の枠組みに従いつつ、東京電力福島第1原発事故とその原因もまだ解明されていない現状を踏まえ、生活者の視点から地震への備えや断層の問題、電源対策、避難計画、使用済み燃料などについて、電力会社に厳格な立証を求め、その主張や説明が不十分だとして原発の運転を止めた。画期的な司法判断だといえる。

 とりわけ福島の事故を経験した今、避難計画を抜きに安全性の判断はできない。高浜原発が事故を起こしたときの逃げ道は地形的に限定されているので、国の責任に言及したことも、もっともな話だと思う。

 電力会社に綿密な立証を求めている点は従来の判決や決定と異なり、今後の裁判に大きく影響するとみられる。

 一方、山本善彦裁判長は2014年11月、当時新規制基準で審査中の原子力規制委員会が「いたずらに早急に、適合すると判断して再稼働を容認するとは考えがたい」などとして、同じ高浜原発3、4号機などの運転差し止めを求める仮処分の申し立てを却下した。

 その後、規制委の姿勢や審査の在り方をじっと見ていたのだろう。電力会社に厳しい地震学者を退任させ、原発の「再稼働ありき」がにじむ状況に対し、安全を軽視しているという心証を形成したのではないか。

 新規制基準に適合しているとされた高浜原発の設備について「このような備えで十分であるとの社会一般の合意が形成されたといってよいか、ちゅうちょせざるを得ない」と指摘しているのは、規制委と電力会社への不信感の表れといえよう。

 そして決定書では、余裕を持って安全といえるかどうかを冷静に判断することの重要さを示してみせた。

 これからの問題としては、裁判官の人事異動が挙げられる。

 今回の決定に対する関西電力の異議を受けた審理(異議審)に向け、生活者の観点や過酷事故を経験したことを忘れ、最高裁の枠組みをただ当てはめて「国が安全と言っているから安全だ」と判断するような裁判官が配置されるかもしれない。しっかり監視しなければならない。

国際標準逸脱の判断 日本エネルギー経済研究所理事長 豊田 正和

 大津地裁が関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止めを決定したが、基本的に国際的な標準から大きく外れた判断と考えている。

 米国などでは、厳しい安全基準がつくられて米原子力規制委員会(NRC)が安全性を満たしているかどうか判断している。原子力の安全をめぐる裁判の国際標準は、規制委が判断した内容を争うのではなく、規制委が判断に至った「手続き」に透明性はあるか、ヒアリングは十分かなどを争うものだ。

 今回の大津地裁決定は、安全性の確保について関電の説明が十分でないと強調している。だが、関電は裁判では、原子力規制委員会へ説明した内容を訴えたはずだ。今回の決定は、「手続き」に関する議論を逸脱したものだ。その意味で非常に違和感を感ずる。

 菅義偉官房長官が記者会見で「原子力規制委の新規制基準に依拠する判断を尊重して、再稼働を進める方針に変わりはない」と述べたが、全く合理的な発言だと思う。原子力規制委の新規制基準は世界一厳しいものであり、その規制基準は変える必要はない。

 私は、規制委が適合性審査に合格とした原発は再稼働させるべきだと考えている。

 日本は1次エネルギーの自給率が6%という資源小国だ。石油・天然ガスの主要輸入先である中東は、サウジアラビアとイランが対立し、過激派組織「イスラム国」(IS)による戦闘激化などで不安定化している。

 原発の代わりに期待する声もある太陽光発電などの再生可能エネルギーは発電コストが高く、しかも、発電状態が不安定な電源という欠点がある。一方、原子力は地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を発生させないゼロカーボンという優れた側面がある。

 原子力はウラン購入から発電終了まで5年を要するが、これは5年の備蓄があるのと同じことで原発は準国産エネルギーと位置づけられている。発電コストも、約5兆円の賠償・廃炉・除染コストを入れても最も低いエネルギーである。

 問題は、その安全性が十分にチェックされているかどうかである。事故が起きると、日本の地域社会に深刻な被害を与える可能性を排除できないからだ。私は、安全性の確保を前提とした上で、原子力は日本経済の発展に不可欠と考えている。

 エネルギーの安全保障、経済性、環境面の「3E」から総合的に勘案しても原子力は日本に必要なエネルギーなのだ。


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