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コスト主義、定期検査短縮化が遠因? 史上最悪11人死傷・美浜原発事故(中)

  • 2004年8月12日
  • 18:46
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 事故は建屋内で二百二十一人の作業員が定期検査の準備を進めている最中に起こった福井県の美浜原発事故。十四社の作業班が工具や計器類を運び入れ、二〇〇四年八月十四日の定検入りを目指していた。被害に遭った木内計測の技術員十一人は、たまたま破損した配管から十メートルの場所にスペースを確保。事故のあった九日が初めての準備作業だった。

 「作業員は動き回っている。事故時、どこに誰がいたかは把握できない」(関西電力)。惨事はさらに大きくなる可能性があった。

 ■いつか事故が

 「コスト優先主義が事故につながった」「安全性確保が二の次にされている」―。事故直後から噴きだした批判の声が次第に大きくなっている。

 「経済性の追求」を最も物語るのがここ数年、電力各社が進める定検の短縮化。関電によると、約九カ月前から協力会社と検査内容の協議を進め、定検入り後は昼夜を徹した作業が続けられる。今回の事故時、多くの作業員が運転中のタービン建屋内にいたことは「事実上の定検の前倒し」ととらえる向きもある。

 「かつて数カ月かかった定検が今では四十―五十日。原子炉周辺は確かに安全性が確保されているが、二次系の機器には不具合が生じている。こんないいかげんな整備ではいつか事故が起こる、と以前から話題となっていた」。関電の関連会社の元社員は定検短縮化の危険性を指摘する。

 「夜の作業がつらく、きちんと仕事ができない。関電に訴えてほしいという依頼がある」。地元の松下照幸町議は作業現場の実態を明かす。

 電力自由化の中で、コスト削減は電力各社の至上命題。同社は「短い期間でどれだけ作業密度を上げるかを考える。だが、決して安全性の低下につながってはいない」と強調する。しかし、現場担当者の意識にどれだけ根付いているのか―。

 美浜原発の資料には「定期検査○日達成」との文字が躍っている。

 ■問われる組織体質

 関電は一九九九年、プルサーマル用MOX燃料の検査データのねつ造発覚で、県民の信頼を失った。そのプルサーマルが実施に向けて動き始めた直後、今年六月には十一カ所の火力発電所で三千六百件を超すデータ不正のあることが分かった。

 「企業風土ではない」「原子力部門は厳しい法規制にのっとって行っている。原発ではあり得ない」。当時、藤洋作社長は力説したが、今度は国内の原発史上最悪の事故を引き起こした。現場を視察した中川昭一経済産業相は「関電は『(仕事に)緊張感を持つ』と言ったばかりなのに」と唇をかんだ。

 事故を機に、あらためて組織体質を問う批判が噴出している。「何かあればすぐに幹部が箝口(かんこう)令を敷く。秘密主義は変わらない」「関電ほど工事契約金に厳しい電力会社はない。われわれとしても安全性は二の次にならざるを得ない」。内部告発的な情報が飛び交っている。

 ■苦しむのは地元

 一九九一年、美浜2号機で国内では初めて緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動した蒸気発生器(SG)の細管破断事故があった。その後、SG交換や企業体質の改善に努め「われわれは生まれ変わった。情報公開も自発的、積極的に行うようになった」と胸を張った幹部は少なくなかったが…。

 原子力資料情報室(東京)の勝田忠広さんは「あれだけ騒がれた昨年の東電問題も、どれだけ真摯(しんし)に受け止めていたのか。炉型が違うから、と軽視していなかったか」と疑問を呈する。

 続けて「経済性を優先する結果、関電が真剣に安全性をチェックするのは原子炉周辺だけとなった。その結果苦しむのは地元住民だ」。今回の事故の本質を指摘した。


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