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規制庁なしの原発再稼動に懸念 保安院、安全委員会の旧体制存続

  • 2012年4月18日
  • 17:48
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原発の安全規制組織
原発の安全規制組織

 枝野幸男経済産業相から関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働で協力要請を受けた2012年4月14日、時岡忍おおい町長は「立地の思い」の一つとして原子力規制庁の設置を急ぐよう注文。「原子力安全規制に対する体制が現時点で大きく損なわれている。規制機関として実効性、透明性を高めて国民の信頼を回復してほしい」と訴えた。

 政府は、新たな規制組織として環境省の外局に原子力規制庁を設置する方針。だが、関連法案はいまだ国会で審議に入っておらず、4月1日を目指していた発足は大幅にずれ込む見通し。再編されるはずだった経済産業省原子力安全・保安院と原子力安全委員会がずるずる存続している。

 福井県敦賀市の河瀬一治市長は9日、全国原子力発電所所在市町村協議会長として原子力規制庁の早期発足や利用と規制の明確な分離を国に要請した。自らの姿勢は「規制庁が立ち上がらないと再稼働の議論の土俵には乗れない」とさらに厳しい。

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 安全規制を担う保安院が原発を推進する経産省の傘下にある体制は、従来も疑問視されていた。

 昨年6月、保安院は停止中の原発をめぐり、緊急安全対策と過酷事故対策のみで安全上支障がないと立地自治体に説明。再稼働ありきのような姿勢に、県会からは「ブレーキのはずがアクセルだった」と批判が相次いだ。

 時岡町長との会談で枝野氏は「本来は安全を説明する大臣と必要を説明する大臣が別であることが望ましい」と弁明し、推進と規制の分離は「福島の事故を踏まえた大きな教訓だ」と述べた。

 しかし、組織移行が遅れればその分だけ、大きな批判を浴びた旧体制が続くことになる。わかさ東商工会の野瀬成夫会長(68)=美浜町佐田=は「保安院の説明を住民はあまり信用できなくなっている」と立地地域の不安を代弁する。

 原子力資料情報室の西尾漠共同代表は、規制庁の発足を待たず旧体制下で再稼働を判断する安全基準を決めたことに「ただ、再稼働を急いでいるようにしか見えない。だから、余計に信頼されなくなる」と突き放した。

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 国会でたなざらしとなっている関連法案には、原発運転期間の原則40年制限や、最新知見を既存原発に反映させるバックフィット制度、過酷事故対策の義務付けを盛った原子炉等規制法も含まれている。今後の原発の行方を大きく左右するが、詳細は明らかでない。

 美浜1号機に続き7月には2号機が運転40年を迎える美浜町の彦惣弘明原子力対策室長は「運転延長の基準をできるだけ早く明確にすべきだ」と指摘。その上で「安全規制に空白期間があってはいけない」と強調する。

 県内4カ所の原子力保安検査官事務所を束ねる森下泰地域原子力安全統括管理官は、組織移行のはざまで複雑な心境だ。「(経産省の下でも)国民の安全を守るという使命感で仕事をしてきたが、信頼感が失われた」と身に染みて感じつつも「安全をチェックする現場の仕事に変わりはない。従来通りやるだけだ」と話した。

 政府は1月末、原発の新たな安全規制組織として原子力規制庁の設置を盛った関連法案を国会に提出。しかし、野党の反発で審議にも入れない状態が続いてきた。

 自民党は11日に対案を提示。公明党もほぼ同じ案をまとめており、週内に両党対案を国会提出する運びとなった。与野党でようやく修正協議が始まることになる。

 最大の論点は、新組織の在り方として、政府からの独立性に重きを置くのか、それとも緊急時の政府の指示権、関与を重視するのか、だ。

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 自民党が重視するのは「政府からのより高い独立性の担保」(塩崎恭久元官房長官)。経済産業省から切り離して環境省の外局に置く点では政府案と同じだが、自公案は独立性の高い三条委員会=Wワードファイル=として原子力規制委員会を新設し、その下に規制庁を設ける形となる。

 東京電力福島第1原発事故では、菅直人首相(当時)が独自にベントや海水注入などの指示を出し、現場の混乱を招いたとの反省を踏まえ、専門的、技術的判断への政治家の介入を排除する狙いがある。

 自民党の「原子力規制組織に関するプロジェクトチーム」座長を務める塩崎氏は、2月の衆院予算委員会で「原子力規制組織を見直す最大の目的は『菅直人リスク』をなくすことだ」と言い切った。

 これに対し、細野豪志原発事故担当相は「あれだけの事故全体の責任を政治が負わなくてどうするのか」と反論。「内閣の責任の下で適切な危機管理ができる体制が望ましい」と強調した。

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 人事権をめぐっても政府と自公両党の考え方は異なる。

 政府案は、環境相が規制庁長官を任命する。一方、自民党案は、原子力規制委員会の委員は国会同意の対象とするものの、規制庁の人事は環境省から独立させる。

 また、環境省には専門知識の蓄積がないため、多数の職員が保安院から横滑りする見通し。政府は、一定の役職以上の幹部には出身省庁に戻さない「ノーリターン・ルール」を適用する考えだ。しかし、自民党は全職員を対象にすべきだと主張。塩崎氏は「このままでは“第2保安院”ができるだけ」と訴える。

 規制組織の在り方として国際原子力機関(IAEA)の安全基準では、政治環境や経済条件の圧力に左右されない判断が必要と規定する。ただ、国により組織形態が大きく異なるのも現実だ。

 原子力資料情報室の西尾漠共同代表は「政府の省庁に付属する形ではなく、環境省だろうが経産省だろうが、あらゆる政府機関から独立していないといけない」と指摘する。

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 規制組織の再編をめぐり本県は「保安院を独立させても、形だけで終わっては意味がない」(西川知事)との立場。昨年9月には枝野幸男経産相に「発電所に近い現場で強い権限と指導力を持つ組織」をつくるよう要請した。

 規制庁は485人態勢で、立地道県には現在の原子力保安検査官事務所に加え、地域原子力安全連絡調整官を道県庁に駐在させ、自治体と規制業務の連絡調整を担う予定だ。

 内閣府の規制庁準備室は「福島の事故を踏まえ、より現場を重視した」と説明する。安全規制や事故対応で、立地自治体の視点をいかに反映し、住民の安心につなげられるかは、「独立性」以上に大きな課題だ。


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