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見えぬ廃炉、建屋内部は手つかず 福島事故5年、福井新聞記者ルポ

  • 2016年2月6日
  • 07:42
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3号機の原子炉建屋。使用済み燃料プールのある階(上端)まではがれきが片付いたが、北側は天井が崩れたまま残った部分も=福島県の福島第1原発(代表撮影)
3号機の原子炉建屋。使用済み燃料プールのある階(上端)まではがれきが片付いたが、北側は天井が崩れたまま残った部分も=福島県の福島第1原発(代表撮影)

 「廃炉作業は、何とか1合目くらいにいけた」。東京電力福島第1原発の小野明所長は、こう語ってみせた。「1F=イチエフ」(同原発)の構内は、作業環境こそ確かに改善していた。しかし、汚染水は増え続け、溶け落ちた燃料の位置も分からない。建屋内部の汚染源に迫る本当の意味での「廃炉作業」はまだ始まってさえいない。日本記者クラブ取材団として1月26、27日に現状を見た。

 発電所の正門から原子炉建屋までの距離は1キロ余り。正門を入ってすぐの入退域管理施設で手渡されたのは、医療用マスクと綿手袋、靴カバーに線量計のみだった。驚くほど軽装で、桜並木の構内道路を歩いた。昨年12月から、この装備で歩けるようになったという。

 構内では除染作業が急ピッチで進められている。土が露出している部分にモルタルを吹き付け、放射線量を大幅に減らしている。敷地の一部では防護服を使用しないで作業ができるよう、1月22日に原子力規制委員会に変更申請したという。取材中、同行した東電担当者は線量の低減具合を何度も力説していた。

 防護服とゴーグル、半面マスクなどを身に着け、高台から原子炉建屋に近づくと、線量は一気に毎時200マイクロシーベルトに。5時間ほどで、一般人の年間被ばく限度を超える計算だ。1、2号機の排気筒の周囲には、高線量で手が付けられないがれきが散乱している。東電担当者は「ベントによって放射性物質が多量についたとみられる」と説明した。

 2017年度から使用済み核燃料を取り出し始める3号機は、燃料プール表面までがれきを片付けたものの、建屋北側は天井が崩れたまま。内部は、詳しく見られなかった。

 4号機建屋に隣接する使用済み燃料の共用プールには、6726体もの燃料が保管されており、空きはわずか1%。燃料を金属容器に入れて空気で冷やしながら保管する「乾式貯蔵」の設備も28基あり、1412体が入っている。設備は50基まで増やす計画だ。

 1日300トンも地下水が建屋に入り込むため、汚染水は増え続けているという。放射性物質の除去装置を駆使しても、取り切れないものがあるため、貯蔵能力千トンクラスの汚染水貯蔵タンクも増加の一途をたどる。既に910基あり、2〜3日に1基増設しないと間に合わない計算だ。「当面は、タンクにためてこぼさないというのが使命」(小野所長)となる。

 東電は地下水バイパスや凍土壁といった対策工事の現場も公開。地下水位を下げすぎると建屋内部の汚染水が周辺へ逆流する危険性もはらんでおり、コントロールは容易ではない。

 何をもって廃炉完了とするのか。小野所長に、こんな素朴な質問をぶつけた。返ってきた答えは「リスクを小さく固めて、管理した形で遠ざけること」。その上で、こう強調した。「1〜4号機の周囲や海側など、放射性物質のリスクはかなり限定的になった。そういった意味での廃炉は進んでいる」

 ■防護対策ない給食施設に違和感

 東京電力福島第1原発で働く約7千人に温かいご飯を届ける「福島給食センター」(福島県大熊町)も取材した。原発から直線距離で9キロ先に東電が建設し、昨年6月から毎日2千食強を調理している。居住制限区域内に建っているが、線量が仮に上がった場合の想定を運用上、ほぼしていないという、無防備さが気になった。

 大規模調理施設について国は食中毒予防のため、調理終了から2時間以内に食事を提供するよう求めている。原発近くに建設したのはこのためだ。

 安全を確認した上で同県内の食材を極力使う。施設周囲の空間線量も測定し、所内に掲示している。一見、食事による作業員の内部被ばく対策に気を使っているが、運営会社の渋谷昌俊社長は「特別な放射線防護をしている施設ではない」と明かす。

 「放射性物質を原発外に出さない対策をかなり取っている」(東電)というよりどころはあるが、放射性物質が再び拡散しないという前提は、福島事故以前の「安全神話」と似ている気がする。

 「そういう事態になったら、東電などと一緒に考えたい」と運営側。施設運用を中止する特別な基準もない。ならば周囲の線量を測定して所内に掲示するのには、一体どんな意味があるというのだろう。(福井新聞・取材ノート)


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